震災からの復興度「100点」の村 止まらぬ人口減、夢を託すのは

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御船紗子

 赤と黒の装束に鳥甲(とりかぶと)と面を着けた舞い手が高く跳ぶごとに、歓声がわく。観客は約130人。ゴザとイスが足りず、立ち見が出た。

 「こんなに人が集まるなんて」。廊下から会場をのぞいていた岩手県普代村の役場職員、小松鈴(れい)さん(23)がつぶやいた。

 村に伝わる伝統芸能「鵜鳥(うのとり)神楽」が国の重要無形民俗文化財に指定されて10周年の記念公演。小松さんは運営に携わった。

 会場の海辺の宿には、朝から村内外の人が集まり、観客の熱気でむせかえるようだった。

海辺の宿に130人の熱気

 大阪府羽曳野市出身の小松さんは、地域おこし協力隊の妹を訪ねて普代を訪れ、あたたかさにひかれた。大学を卒業し、昨年4月から村役場に勤める。伝統芸能は遠い存在で、初めて神楽を見たときは「正直、田舎っぽい」。でもこの日、神楽を見て笑い、獅子頭に手を合わせる観客を見て気づいた。「住民と神楽の距離が大阪よりずっと近い。身近やから絶やしてはいけないんや」

 県沿岸北部の村は、東日本大震災で漁業施設などが被災したものの、民家の被害はなかった。5年前、朝日新聞が実施した首長アンケートで、柾屋伸夫村長(70)は震災後の復興状況を「100点」と答えた。

 震災から14年間で人口は約…

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この記事を書いた人
御船紗子
東京社会部|サイバー担当
専門・関心分野
サイバー、居場所、文化の継承