「父と母との思い出は、ない」 15歳が両親に刃物を振り下ろすまで

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手代木慶
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 両親を殺害したとして殺人罪に問われた少年に対し、横浜地裁は刑罰を科すのではなく、専門家による矯正教育を受けさせるために横浜家裁への移送を決めた。少年は逮捕後に家裁送致されたが、家裁が検察官送致(逆送)と判断し、刑事裁判となっていた。「極めて珍しい」とされる移送決定が重く見たのは、両親の殺害という選択をするに至った少年の成育歴だった。法廷のやりとりからたどる。

 2月に開かれた裁判員裁判。少年は傍聴席から顔が見えないように設置されたついたての奥で、はっきりと自分の考えを述べた。

 検察官 「お父さんの命を奪ったことはどう考えていますか」

 少年 「大きな間違いだったとは思います。でも、(殺さないと)恐怖から逃れられないと思いました」

 検察官 「お母さんの命を奪ったことはどう考えていますか」

 少年 「後悔しかありません。『殺して』と言われて、冷静に考えられませんでした」

 起訴状や検察側の冒頭陳述などによると、少年(事件当時15)は相模原市マンションで、介護福祉士の父親(同52)、薬剤師の母親(同50)と3人で暮らしていた。家庭生活に「底なしの恐怖感と束縛感があった」と振り返った。

 小学生のころ、主に父親から暴力を受けたという。近所の家の換気扇を壊したと決めつけられ、人前で殴られた。母親からは「産まなきゃよかった」と言われた。

 中学生になると暴力はやんだが、両親に代わって家事を担った。感謝の言葉はなく、母親は少年が作った料理を捨てることもあった。

 検察官 「お父さんとの思い出や感謝していることは」

 少年 「全くないです」

 検察官 「一つもないですか」

 少年 「思い出せないです」

 検察官 「お母さんについては」

 少年 「母もないです。正直、思い出せないです」

父への「嫌がらせ」で

 高校受験の年になっても、父…

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