ツタンカーメン以来103年ぶり トトメス2世の墓発見、その意義は

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聞き手 編集委員・宮代栄一

 古代エジプトの新王国時代第18王朝(紀元前1550年ごろ~同1295年ごろ)のファラオ(王)、トトメス2世の墓が、エジプトと英国の合同調査団によって発見された。「近年で最も重要な考古学的発見の一つ」(エジプト観光・考古省)といい、その意義についてエジプト学が専門である金沢大学の河合望教授に聞いた。

謎の多いトトメス2世の手がかりに

 古代エジプトの王墓としては約100年ぶりの発見ともいわれていますが、第2次世界大戦中にフランス隊がエジプトのタニス遺跡で未盗掘の複数の王墓を見つけているので、正確には新王国時代、いわゆる第18王朝の王墓としては1922年のツタンカーメン以来、103年ぶりの発見となります。

 トトメス2世は、のちに女王となり権力をふるったハトシェプストの夫として知られていますが、現在の南エジプトから北スーダンのあたりにあったヌビア(クシュ王国)を下した以外の治績があまりよくわかっていません。在位期間も3年とする説と、13年とする説があるなど、不明な点が多いのです。今回の発見は、彼の治世を知るための重要な手がかりになるかもしれません。

 今回の墓は、実は2022年にはすでに確認されていました。このタイミングで発表されたのは、出土したアラバスター(雪花石膏(せっこう))の容器に、トトメス2世とハトシェプストの名前が刻まれていると判明したのが大きいと思います。写真から解読した限りでは、「神(アメン神)の妻、偉大なる王妃、ハトシェプストは彼女の兄弟、良き神、二国の主、アアケペルエンラー(トトメス2世の即位名)、永遠の生命を与えられし者、オシリス神に愛されし者の記念物として(これを)作った」と読めます。ハトシェプストが、容器を夫であるトトメス2世のために副葬品として作らせ、墓に納めたものと推定されます。

 トトメス2世とハトシェプス…

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この記事を書いた人
宮代栄一
編集委員|歴史・考古学担当
専門・関心分野
歴史、考古学、文化財