2035年まで人口増の町、ブランド価値高めつながる力で適疎めざす

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根津弥
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A-stories 8がけ社会 消滅の先へ(4)

 北海道のほぼ真ん中、道内最高峰の旭岳(2291メートル)のふもとに広がる東川町の中心部では、戸建て住宅の新築が相次いでいた。

 1区画は385~502平方㍍(116~151坪)、土地価格は500万~700万円台。東京から訪れた記者にとっては、桁違いの値段だった。2023年に販売されると、68区画が5カ月で完売した。購入者の3分の2ほどは町外からの移住者だという。

 北海道は全国でも、人口減少が著しい地域だ。国立社会保障・人口問題研究所が23年に公表した将来推計では、50年までに人口は20年の522万人から140万人以上減少する。民間の有識者でつくる「人口戦略会議」の推計では、6割超の自治体が「消滅可能性自治体」とされた。

 東川町も高度経済成長期は人口流出が続き、1994年に人口は7千人を下回った。だが、この頃から隣接する旭川市ベッドタウンとして民間主導で大規模な宅地造成が始まり、同年末から人口は増加傾向に転じた。00年代に入ると、町も単身者やファミリー層を受け入れるためのアパート事業者への建築費助成を行い、景観を重視したゆとりある宅地開発も進めた。

 その結果、いまや町民の2人に1人は25年以内に転入した移住者が占める。現在8500人が暮らすが、町独自の試算によると、35年には9千人に膨らむという。

 今後、人口減少が全国有数の速さで進む北海道で、なぜ東川町は「一人勝ち」のような状況を生み出せたのか。住宅整備の積み重ねや旭川空港から車で10分ほどのアクセスの良さだけが要因ではない。

連載「8がけ社会 消滅の先へ」

 地方の「消滅」危機が唱えられて10年以上が経ちました。日本の人口はさらに縮小し、並行して現役世代が2割減る「8がけ社会」へと向かいます。すべての自治体が今のまま続くとは考えにくい。だからこそ「消滅の先」を描こうとする各地の取り組みから、地方の未来を考えます。

ブランド価値、生み出した「写真の町」

 若者を中心に人々を引きつけ…

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この記事を書いた人
根津弥
東京社会部|会計検査院・調査報道担当
専門・関心分野
刑事司法、調査報道、人口減、災害復興