首相、USスチール買収阻止めぐり「懸念払拭を」 バイデン氏に要請

南有紀 ワシントン=清宮涼
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 石破茂首相は13日、バイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領と行った3カ国首脳テレビ協議で、バイデン氏に対し、同氏が禁止を命じた日本製鉄によるUSスチール買収計画について提起し、日米経済界に広がる懸念を払拭(ふっしょく)するよう米側の対応を求めた。

 協議後、首相や外務省が明らかにした。首相は協議で、強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)の確立のためには同盟国・同志国間の連携が必要不可欠であり、経済安全保障を推進するためにも、企業が安心して投資を行うことができるよう取り組むことが重要であると指摘。その観点から、USスチールの買収問題について言及し、「日本のみならず、米国の経済界からも強い懸念の声が上がっている。懸念の払拭を強く求める」とバイデン氏に伝えたという。

 首相の記者団への説明の中で、首相は自身の発言にバイデン氏がどのような反応をしたかは明らかにしていない。首相は「この問題に限らずだが、いろいろなやり取りがあったわけではない。それぞれが自分たちの考えていること、あるいは今までの日米比3カ国のいろんな取り組みの総括・評価を申し述べた」と記者団に語った。

 一方、約25分間の協議では、3カ国間の海洋安全保障や経済安全保障、インフラ強靱化などの分野での協力の継続で一致。石破氏は記者団に「東南アジアはインド太平洋地域の要に位置している」と述べ、「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現のため、さらに努力をしていく」と話した。石破氏によると、20日に退任するバイデン氏からは日米の安保協力について「次期政権でも取り組みの継続を願う」という発言があったという。

 米ホワイトハウスによると、3首脳は南シナ海での中国の「危険で違法な行為」をめぐっても協議した。3首脳は、自由で開かれたインド太平洋の推進のため、連携を続ける重要性を確認したという。

 石破氏はまた、記者団に対し、自身とトランプ次期米大統領との会談について「政権発足後、最もふさわしい時期に最もふさわしい形で行う」と述べ、最終調整していることを明かした。岩屋毅外相が出席予定の大統領就任式で、会談日程を議論する可能性に言及した。政府関係者によると、日米豪印外相会談も調整している。

 日米比の安保協力をめぐっては、インド太平洋地域で権益拡大を図る中国への対抗策を念頭に、米バイデン政権が3カ国の枠組み確立に力を入れてきた。昨年4月には、バイデン氏、岸田文雄首相(当時)、マルコス氏による3カ国での首脳会談を初めて米国で開催した。

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この記事を書いた人
清宮涼
アメリカ総局
専門・関心分野
外交、安全保障、国際政治