トランプ氏が連発する「大統領令」とは 研究者が感じる執念と危うさ

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聞き手・真田嶺
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 トランプ米大統領は2度目の就任直後から多くの「大統領令」に署名し、前政権の政策を覆しながら自身の公約実現に突き進んでいます。この大統領令の運用は識者の目にどう映るのか。米国政治、特に大統領令に詳しい東京大学大学院法学政治学研究科の梅川健教授に聞きました。

 ――そもそも「大統領令」とはどういうものですか。

 大統領は合衆国憲法で、外交と安全保障を担うとともに、各種の法律が誠実に執行されているかを監督する義務を負うとされています。

 これを根拠に、行政組織に対して法律をどう執行するかを命令できます。いわゆる「大統領令」です。

 日本語では「大統領令」とまとめられてしまいがちですが、大統領令は主に「行政命令」(executive order)、「大統領覚書」(presidential memorandum)、「布告」(proclamation)に分けられます。より重要なのは行政命令と大統領覚書です。

 今日でも憲法に規定されていませんが、20世紀以降、行政組織に対する命令文書の形式は徐々に整えられてきました。

カギは「根拠となる法律の明示」だが

 ――行政命令と大統領覚書の違いは何ですか。

 行政命令とは、どのように法…

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この記事を書いた人
真田嶺
国際報道部
専門・関心分野
北米、中南米、移民、AI、ポッドキャスト
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    河野有理
    (法政大学法学部教授)
    2025年2月1日16時2分 投稿
    【視点】

    法的性格の異なるものが混在するままに一括して使われる「大統領令」を明快に整理し、オバマ政権以来の歴史的変化を見通した良記事である。アメリカの大統領令は、他の大統領制を採る国と比べてさほど強力なものとは言えず、「本来的には弱いものを、強く運用

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  • commentatorHeader
    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2025年2月3日11時9分 投稿
    【視点】

    梅川先生は、歯止めを効かせるにはアメリカ国民が選挙でその意志を示すことが重要とのコメントをされているが、その選挙でトランプを選び、上下両院で共和党多数を選んでしまった以上、国民の意思は示された、ということになるのだろう。そしてその意志は、国

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