「増額」か「減額」か…生活保護費の見直し 大詰め議論は対立のまま

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高絢実 編集委員・清川卓史

 「最後のセーフティーネット」とされる生活保護費をめぐり、見直し議論が大詰めとなっている。利用者らは「物価」の高騰などから増額を訴える一方、財務省は「消費」の実態をもとに減額への布石を打つ。年末の予算編成を前に、主張は対立したままだ。

 「食べ物がどんどん値上がりし、正規の値段で買えない」。4年ほど前から生活保護を利用する東京都の50代女性は、苦しい生活をこう訴える。

 病気の治療や副作用のため仕事を続けることができず、ひと月7万円弱の生活保護費でやりくりする。故障したエアコンの修理費が工面できず、夏は室温30度以上の部屋で、ぬれたバスタオルを体に巻き付けて扇風機のみで耐える。熱中症で倒れたこともある。

「黙っていたら同じように……」

 午後8時以降になると半額に…

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この記事を書いた人
高絢実
くらし報道部|社会保障担当
専門・関心分野
外国人、在日コリアン、社会保障全般
清川卓史
編集委員|社会保障担当
専門・関心分野
認知症・介護、貧困、社会的孤立
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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年12月8日8時37分 投稿
    【視点】

    厚労省が2013年から15年にかけて保護基準額を大幅に引き下げた際には、物価の下落、しかも策術的に割増計算された下落率を使用していた。その違法性について、たとえば今年の6月13日に東京地裁が言い渡した判決においては、引き下げの根拠として厚生

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    加谷珪一
    (経済評論家)
    2024年12月9日18時22分 投稿
    【解説】

     記事もあるように生活保護の支給額は、生活に必要な最低水準の金額、という考え方をベースに算定されます。近年、大規模緩和策の影響で物価が激しく上昇していますから、給付を受けている人たちの生活が苦しくなっているのは容易に想像ができます。一方で、

    …続きを読む