尹氏はなぜ、成算もなく非常戒厳に踏み切ったか 元大統領側近の視点

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聞き手・牧野愛博
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 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が3日夜に宣布した「非常戒厳」を巡り、韓国内が紛糾しています。非常戒厳は4日未明に解除されましたが、野党勢力は尹氏の辞任を求めています。1960~70年代に軍事独裁政権を率いた朴正熙(パクチョンヒ)大統領の側近だった康仁徳(カンインドク)・元韓国統一相(93)は、「これから韓国は大混乱に陥るだろう」と語ります。

 ――非常戒厳をどのように受け止めましたか。

 最初に頭に浮かんだのは「果たして、発令の必要があるのか」という疑問でした。確かに、野党が政府の仕事をすべて阻んでいたのは事実です。

 しかし、わが国の法律上、野党が国会で過半数を握っているため、非常戒厳を発令しても、すぐに解除されることは目に見えていました。

「大統領に進言できる人間がいない」

 ――野党が解除決議をしても、尹大統領は非常戒厳を維持できると考えていたのでしょうか。

 私も朴正熙政権時代、何度も戒厳令の現場を見てきました。戒厳令を維持するためには、まず第一に軍部の支持が必要です。朴大統領は当時、軍を掌握し、軍が朴氏に対する忠誠心を競っているような状態でした。

 今回の非常戒厳に賛成した側近は金竜顕(キムヨンヒョン)国防相だけだったそうです。今の軍部が一致団結して尹氏に従うとは思えません。情報機関の国家情報院や検察当局なども支持しない以上、非常戒厳を維持できません。準備不足のまま、発令したのだと思います。

 ――なぜ尹氏は、成算もなく、非常戒厳に踏み切ったのですか。

 おそらく、非常戒厳を宣布す…

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島
韓国「非常戒厳」

韓国「非常戒厳」

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