ウクライナと戦闘始めた北朝鮮 背景に正恩氏の「冷酷な戦略的計算」

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聞き手・牧野愛博

 米国務省は12日、ロシア南西部クルスク州で北朝鮮兵がロシア軍とともに、ウクライナ軍との戦闘を始めたと確認しました。金正恩(キムジョンウン)総書記はなぜ兵士の派遣に踏み切ったのでしょうか。ウクライナ出身で、北朝鮮のロシアに対する軍事支援を研究している韓国外国語大学のオレナ・グセイノワ講師は「朝鮮半島有事に備えるため、兵士の命を犠牲にする考えなのかもしれない」と語ります。

 ――北朝鮮の派兵規模をどう予測しますか。

 「兵員配備の上限」という国際的な理論があります。中核的な防衛能力を損なわずに、国外で安全に展開できる限度を意味します。

 国内の即応性を最大限に維持しようとする場合は総兵力の1~5%、より大きな軍事力とより広範な国際的コミットメントを持つ場合は同10~15%、長期的で大規模な対外活動に関与する場合は同30~40%以上とされています。

 様々な推計によると、北朝鮮軍は約120万人で、うち約60万人が(戦闘力を持った)現役兵です。北朝鮮が理論的に派兵できる最大値は事実上の総兵力60万人の15%をわずかに超える約10万人ですが、北朝鮮の防衛態勢を著しく損なう可能性が高く、考えにくいと思います。

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「最も現実的な派兵規模の上限は2万人だが…」

 ――では、実際には?

 北朝鮮の現役部隊の約3%に…

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島
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