回し読まれ手渡され、「おばさん」本は世を駆ける 岡田育さんコラム
二〇二一年に上梓(じょうし)した『我は、おばさん』が今月、文庫化される。三十代で甥姪(おいめい)の伯母となり、四十を過ぎて中年の自覚もあるのに、この名乗りが嫌がられるのはなぜだろう。そんな私的な疑問に始まり、時に女傑と崇(あが)められ、時に魔女と恐れられ、時に姥捨(うばすて)山へと追いやられながら社会と切り結んできた、古今東西のおばさんたちを紹介するエッセイだ。
正直さほど売れていないのだが、そう言うと逆に驚かれるほど、多大な反響が寄せられた。テレビや新聞雑誌で取り上げられ、読者から熱烈な感想も届き、SNSには本の写真がどしどし投稿され、よく見るとその一部、いや多くが、全国の図書館で貸し出されたものとわかる。おいおい買って読んでくれよ!と嘆きつつ、喜びも大きい。図書館に入った本は広義の公共財の一端を担う。背筋が伸びる想(おも)いである。
子供の頃から地元の区立図書…
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