海ないのに「タコ」のわけ 蛸薬師堂 永福寺 京都シン寺社案内

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平野圭祐
写真・図版
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 廬山寺通(ろざんじどおり)、六角通、仏光寺通――京都市内には、寺院の名前がついた通りが多い。なかでも印象的なのが東西に走る蛸薬師通(たこやくしどおり)だ。京都の子どもたちが東西の通り名を覚えるための「……あね、さん、ろっかく、たこ、にしき(姉小路通(あねやこうじどおり)・三条通・六角通・蛸薬師通・錦小路通)……」というわらべうたがある。通り名の由来は蛸薬師堂(京都市中京区)だ。お堂は市内の中心部の新京極と呼ばれる繁華街にあり、周りに海はない。なぜタコなのか? 

 土産物屋が立ち並ぶ新京極通に面する入り口には「蛸薬師如来」と書かれたちょうちんが多くぶら下がる。「蛸」と「薬師如来」という一見、相いれない組み合わせの妙が面白い。境内に一歩足を踏み入れると、先ほどまでの雑踏を忘れ、庶民の信仰を集める町堂の温かさに包まれる。本尊は石像の薬師如来像で、「蛸薬師」と呼ばれている。普段は秘仏で姿を見ることが出来ない。

 星川勝恵(ほしかわしょうえ)住職は「お薬師さんが人のタコやイボなどの病気を治してくれると信仰されてきました。庶民が医者にかかれない時代ですから、祈るしかなかった。今もさまざまな病気平癒を祈願される方が多いです」と話す。時代が平成になると、体の中のはれ物という意味合いから、がん封じの御利益を求めて、参拝する人が増えているという。薬師如来は、現世において救いの手を差し伸べてくれる現世利益の仏様として古くから信仰を集めてきた。

 この薬師如来像はもともと…

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