差別体験がボディーブローのように… 「ハーフ」の不調、調査の原点
ハーフ、ミックスなどとも呼ばれる、日本以外にルーツを持つ人たちが受けている「マイクロアグレッション」の実態を調べたアンケートが、注目を集めている。偏見にもとづく日常的な言動を意味するマイクロアグレッションは、「自覚無き差別」とも言われる。回答者のほぼすべてが経験し、日常的に繰り返されるなかで心の不調を深めていく傾向が明らかになったという。
調査を実施した2人、米カリフォルニア大学客員研究員の下地ローレンス吉孝さん(国際社会学)と、トロント大学博士課程の市川ヴィヴェカさん(社会福祉)に、見えてきた課題について聞いた。
――今春、インターネット上で実施した「日本における複数の民族・人種等のルーツがある人々のアンケート調査」で、複数のルーツを持つ満18歳以上の人たちに、マイクロアグレッションを受けた経験や頻度、ルーツに関するいじめや差別の経験などについて尋ねました(有効回答数448)。
明らかな生きづらさ、実態調査を
【下地】先行研究では、2015年の時点で少なくとも推計84万人程度のミックスルーツの人が暮らしていることがわかっています。ところが、日本ではこのような人々に関する人口調査や統計学に基づく全国的な実態調査が行われてきませんでした。日本におけるミックスルーツ研究のことを、海外では一般的にミックスレイス(多人種)研究といいますが、そのミックスレイス研究では『人口の何パーセントに当たるミックスレイスの人が~』と表現することもあります。ところが日本のミックスルーツ研究ではそれができません。
【市川】実はOECD加盟国の中でも、人種を聞くこと自体が差別にあたるという言説もあり、国勢調査で人種データをとっている国の方が少ないです。
一方で、今回の調査でもわかったように、明らかにミックスルーツの人たちへの差別や本人たちの生きづらさが起こっているのに、それを可視化し、対策しないのは国や行政が責任を放棄しているように思います。
【下地】マイクロアグレッションに関する取材を受けるなかで、海外にルーツを持つ人たちへの研究を通して聞き取った、当事者の状況などを伝えてきました。「それを数値データで示すものはないか」とよく聞かれるのですが、そうした調査がないことをもどかしく思っていました。行政や教育現場への働きかけの際にも量的調査の結果があれば役立つと感じていました。
――今回の調査は、メンタルヘルスの側面を強化した聞き方をしています。なぜそこに着目したのでしょうか。
〝質的〟調査でみえたメンタル不調
【下地】私は社会学からのアプローチなので、これまでの研究ではインタビューの際には社会を分析し、その構造の問題に着目してきました。しかし話を聞いていると、ルーツに起因して受けた差別などが原因と思われる、大人になってからのメンタルの不調を訴える人に多く出会います。小中学校のときの差別経験が、ボディーブローのように効いてきているというような状況です。
そのような〝質的〟調査を重…
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- 【視点】
偏見や固定観念を当事者に浴びせかけることは、すべてマイクロアグレッションになりうる。特に学校の教職員など公的で権力的な立場にいる者からのそれが当事者に及ぼすダメージは大きい。 偏見や固定観念とは、「世の中はこうだ」という、多くの者が依って立
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