台風10号で「最大級の警戒」 暴風や大雨、危険性と備えは
台風10号が日本列島付近をゆっくりと進んでいる。気象庁は「経験したことのないような暴風や記録的な大雨などが予想され、最大級の警戒が必要」と呼びかける。台風の危険性と、直前の備え、役立つ情報をまとめた。
台風は、最大風速が毎秒33メートル以上で「強い台風」、44メートル以上で「非常に強い台風」、54メートル以上で「猛烈な台風」と呼ばれる。
風速が20~30メートルだと何かにつかまっていないと立っていられないほどで、35メートル以上になると樹木やブロック塀が倒壊するおそれがある。
御堂筋のイチョウ並木をなぎ倒す風
2018年に、「非常に強い」状態で近畿地方を縦断した台風21号は、大阪市の御堂筋でイチョウ並木の一部をなぎ倒した。京都大の研究チームは、この周辺で瞬間的に毎秒60メートルを超す暴風が吹いたと推計した。高層ビルの間などで局所的に風が強まったとみられる。
21号では潮位が大阪市で329センチ、神戸市で233センチに達するなど、記録的な高潮も発生した。
関西空港(大阪府)は大規模に浸水し、大勢の旅行客が取り残された。神戸市にある人工島の住宅街なども浸水。兵庫県芦屋市では海に流れ込めなくなった川の水が、市街地であふれた。
また、港湾施設などがある「堤外地」と呼ばれる堤防の外の低地では、コンテナの流出や、自動車の火災などが相次いだ。水につかった車両は電気系統がショートするなどし、火災のおそれがある。
高潮は台風や発達した低気圧が通る際に、海の潮位が大きく上昇する現象だ。主な原因には「吹き寄せ効果」と「吸い上げ効果」の二つがある。
「吹き寄せ」は、暴風によって海水が吹き寄せられることで、海岸近くの海面が上昇する。風速の2乗に比例して上昇幅が大きくなるという。
「吸い上げ」は台風の外側の気圧の高いところでは空気が海面を押し、気圧の低い台風の中心では海面が吸い上げられて潮位が上昇する。1ヘクトパスカルの気圧低下でおよそ1センチ上昇するとされる。
台風の東側「危険半円」
台風の速さやコースでも危険性は変わる。台風は進行方向に対して右側が「危険半円」と呼ばれ、風が強くなりやすい。台風が北上している場合でいうと東側に当たる。
台風に吹き込む風と台風を移動させる風が同じ向きになるためだ。南に開いた湾の西側を速い速度で北上した場合、東側に位置する湾に強風が吹き込み、大きな高潮が起きやすい。満潮の時間帯に重なると特に危険だ。
暴風に対する直前の備えとして、雨戸やカーテンを閉めたり、ガラスにテープを貼ったりすると飛散防止になる。
また、風でとばされないように、屋根瓦や植木、物干しざお、看板などが固定されているか確認したり、屋内に取り込んだりしておくことも重要だ。ガラスの飛散に備えて室内に靴を用意しておくと良い。
暴風が原因で停電になることも多い。18年の台風21号では電柱が倒れるなどして、関西電力管内で延べ約220万軒が停電した。
停電や断水に備えて携帯電話やパソコンなど充電できる電化製品は充電し、浴槽に水をためておくことも有効だ。一定期間は対応できる備蓄も必要だ。
さらに、土砂災害や洪水などにも注意しなければならない。
沿岸部や河川に近い地域など、浸水の可能性がある地域では、台風の接近前に家財や家電製品を2階など高いところに移動させておくとよい。
災害リスク、どう調べる?
避難の判断の前提になるのが、自宅など自分のいる場所の災害リスクを知ることだ。
自治体が発行するハザードマップのほか、国土交通省と国土地理院が作成した「重ねるハザードマップ」(https://disaportal.gsi.go.jp/index.html)では、「洪水」や「土砂災害」といった災害の種別ごとに、どの程度危険なのかが現在地の位置情報を使い確認できる。
危ない場所にいるのならば安全な場所に移動する「立ち退き避難」が原則となる。重ねるハザードマップで「道路防災情報」を地図上に重ねれば、冠水が想定される場所が表示され、避難所までのルートで迂回(うかい)した方が良い箇所などを検討でき、安全な避難の支えになる。
避難の判断材料になるのが、災害発生の危険度を段階的に示して伝える「警戒レベル」だ。広範囲で300人以上が亡くなった西日本豪雨(18年)を経て、19年に現在の5段階の運用となった。その後、「避難勧告」という言葉を廃止するなど、現在の形に改訂された。
レベル3は高齢者や障害がある人など避難に時間がかかる人や、支援が必要な人が避難を始めるタイミングになる。レベル4が出れば、危ない場所にいる誰もが避難を求められる。
ただ、警戒レベルは必ずしも段階を踏んで発令されるとも限らない。過去の水害では、警戒レベルの順を追わず、いきなり最も重いレベル5の「緊急安全確保」が出た例もある。
特に、大雨のピークが夜間にさしかかりそうなケースでは、自治体からの情報を待たずに避難の前倒しを考える必要がある。
夜間は雨脚によって視界が悪い上に、停電で街灯が消えることもありうる。徒歩はもちろん車であっても、側溝と車道の境界がわかりにくくなるといった危険がある。
特に災害リスクが高い場所に自宅がある場合、自治体が設ける指定避難所以外でも、親類や知人の家なども選択肢になる。
前倒しの避難を検討する上で、気象庁の提供する「キキクル(危険度分布)」(https://www.jma.go.jp/bosai/risk)が役に立つ。リアルタイムで変わる浸水や土砂災害の危険度が色分けで表示される。
近くに水害のリスクとなりうる河川がある場合は、特定の河川の状況を知らせる「指定河川洪水予報」(https://www.jma.go.jp/bosai/flood/)がある。全国109の水系を指定していて「○○川氾濫(はんらん)注意情報」といった情報がある。
また、国土交通省などが設置している河川ライブカメラの映像は、10分ごとの状況が公開されている。避難情報が出ていなくても危険を感じれば自主的に逃げるなど、状況に応じた対応をすることが、命を守ることにつながる…
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