自転車並みに遅い台風10号 専門家「偏西風がつかまえ損ねた」

赤田康和
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 非常に強い台風10号(サンサン)は27日、日本の南を北西に進んだ。だが、そのスピードは当初の予想よりも遅く、自転車並みだ。なぜこんなにノロノロなのか。

 気象庁によると、台風10号は27日午後9時時点で、鹿児島県奄美市の東北東約80キロの地点にあり、「ほとんど停滞」している。27日夕方には「ゆっくり」進んでいた。「ゆっくり」とは時速9キロ以下で、自転車並みの速度だ。

 今後は九州に上陸し、日本列島に沿って北東へ進み、少し速度をあげるものの、29日から9月1日まで日本列島の上にとどまる見通しだ(27日午後9時50分現在の予報)。

偏西風の蛇行が小さく 取り残された台風

 台風そのものは反時計回りに回転する強烈な渦だが、自ら前進する力はほとんどなく、周囲の風に流されることで動いていく。

 岐阜大の吉野純教授(気象学)によると、台風10号の速度が予想より遅くなった主な要因は、偏西風だ。

 当初は、西から東へ吹く偏西風が南に蛇行する際に、台風をつかまえて一緒に東へと運ぶとみられていた。

 だが、この偏西風の南への蛇行が予想より小さく、南側にある台風への影響力が弱くなり、台風の速度が遅くなった。「偏西風が台風をつかまえ損ねた状態にある」という。

 台風10号の今後について、吉野教授は「偏西風が新たに大きく蛇行すれば、台風を動かす可能性はあるが、現時点では大きな蛇行は起こりそうもない」と話す。しばらくの間、台風の速度は遅いままになるとみられるという。

 また、台風10号の速度が遅い他の要因としては、日本列島の東西にある、二つの高気圧が生み出す風が相殺していることが挙げられるという。

 日本の東側に太平洋高気圧が、西側にチベット高気圧があり、各高気圧の周囲にはいずれも時計回りに風が吹いている。両者に挟まれた日本列島の上空では「南→北」「北→南」という二つの風が相殺しあい、風が弱くなる。これも台風10号の遅さにつながっているという。台風10号を西寄りに動かした「寒冷渦」も弱くなっているという。

 吉野教授は「台風10号を運ぶ強い風がないため、スピードが遅くなる。このままだと停滞や迷走もありえる。長く大量の雨が降り、強風が続く恐れがあり、災害が発生する危険が高くなる」と指摘する。

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この記事を書いた人
赤田康和
大阪社会部|災害担当
専門・関心分野
著作権法などの表現規制法制とコンテンツ流通、表現の自由