首相の言葉はなぜ響かなかったのか 「ポスト岸田」を待つ説明責任
退任を表明した岸田文雄首相は「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」など、さまざまなコンセプトを打ち出しましたが、中身がわかりにくい政策もありました。看板政策なのに、なぜ「謎」といわれるのか。東京大学の牧原出教授(政治学)に聞きました。
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持続してコミットせず
「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」「令和版所得倍増」は、岸田政権初期に打ち出された政策です。
安倍晋三政権で進められた政策をやめるのではなく、看板を替え、徐々に修正する。党内に向けた手法はよく練られていました。ハト派の政策集団として知られた宏池会の流れをくんだネーミングで、国民へ分配や格差是正などへの期待をもたせたのもよかった。
ただ、岸田首相はどの言葉にも持続してコミットしませんでした。安倍元首相はことあるごとに「アベノミクス」と繰り返し、国民に印象づけた。岸田首相も「新しい資本主義」と言い続け、賃上げとのつながりなどを効果的に説明すればよかったのですが、それをしなかった。
言葉だけが踊った「異次元」
デジタル化で地方の課題を解決し、地域活性化につなげる「デジタル田園都市国家構想」も、デジタル化に関する政策が河野太郎デジタル相の個人商店のようになり、大きなビジョンが見えなくなった。
「異次元の少子化対策」は少子化対策を充実させるという点ではわかりやすいですが、「異次元」という言葉が踊っていました。「異次元緩和」のように安倍元首相が好んだ言葉です。亡くなった後に「異次元」と使った点をみても、安倍政権を脱せなかったといえます。
即席のコンセプト、しばらくたつとまた別へ
岸田首相の言葉はなぜ政策としての成果が乏しいと受け止められているのか、牧原教授は分析を進めていきます。さらに、「ポスト岸田」には厳しい政権運営が待っているといいます。その理由とはーー。
岸田首相は、打ち出したコン…
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