能登に観光、いいの? 専門家が考える「価値」と「気をつけること」
元日の地震から7カ月が過ぎ、能登半島は本格的な夏を迎えた。一方、夏休みなどで、支援の気持ちも込めて能登に観光に行っていいものなのか――。人類の悲劇をめぐる旅を取り上げる「ダークツーリズム」などの著作がある観光学者の井出明・金沢大学教授に尋ねた。
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観光に行っていいのかというと、観光を「禁止」する法律があるわけではなく、実際、いまも観光に訪れている人たちがいます。ただ、私が残念に思うのは、訪れた人が写真だけ撮って帰ってしまうケースが多いことです。
例えば、焼失した「輪島朝市」(石川県輪島市)。壊滅的な被害に見えますが、火災防災の専門家に聞くと、地形的に海や川が障壁となるとともに、木造住宅の密度が東京や大阪よりは低く、当日の風が強くなかったため、更なる延焼を免れたと見るそうです。プロの解説を聞くことで、見ただけではわからない学びが得られます。
東日本大震災の後にも多くの「復興ツアー」がありましたが、気の毒でがんばって欲しいという共感だけでは、ツアーそのものが続かない。共感と深い学びがあり、そこにグルメなどが合わさることで、いい観光パッケージとして続けられるようになります。
被災地に行くにあたっては、そこで実際に生活して苦しんでいる人がいるということを念頭に置くのが大前提です。その上で、何のために行くのかを自問自答し、自分の中で理由付け、落としどころが見つかれば、行く価値は十分にあると思います。
建築を学ぶ学生なら火事の実態や建物を見たいとか、地質に関心があれば「見附島」(珠洲市)の崩落だとか、社会科学的な視点からは人口が減る中での被災社会の現状や復興への道筋を考える契機にもなるでしょう。
「物理的な破壊」だけでなく
災害というのは、非常に多面…
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能登半島地震(2024年)
2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。地震をめぐる最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]