A-stories 8がけ社会とまちの未来(1)
人口減少が進む2040年。高齢化で社会の支え手はますます必要になるのに、現役世代は2割減る「8がけ社会」がやってきます。大都市の中で顕著な人口減に直面する神戸は、縮小する将来を見据えた策を打つ一方、激しい人口争奪戦の最中にあります。葛藤する神戸を通じて、持続可能なまちの未来を考えます。
関西屈指の繁華街、神戸・三宮。そこから神戸港に向かう一角に間もなく「最後のタワマン」が完成する。
地上27階建て、高さ90メートル超のタワーマンション2棟は、JR三ノ宮駅から南に約1キロのウォーターフロントに並び立つ。
上層階からは「1千万ドルの夜景」とされる一部や港が一望でき、「リゾートホテル並み」との評判が広がる。建設した住友不動産によると、上層階の2億円近い部屋を含めて計690戸の売れ行きは好調だという。
タワマンの魅力だけが人気の理由ではない。
同社の広報担当者は取材に答えた。「神戸市のタワマン規制で希少性が高まっている。時とともに価値が上がる可能性も高い」
着工は2019年。翌年、神戸市はJR三ノ宮駅南側の繁華街一帯の22・6ヘクタールで住宅新設を禁じ、その外側を囲むように新神戸駅から神戸駅にかけての市街地292ヘクタールも、容積率400%以上の住宅建設を規制した。
その結果、市中心部では一般的に20階建て以上とされるタワマンが事実上新築できなくなった。
同じ時期、大阪・梅田では大阪駅北側の再開発に合わせ、複数のタワマン新設が進み、職住近接を求める富裕層や、高収入の子育て世帯を引き寄せていた。
多くの住人を集め、「街の繁栄の象徴」とも言えるタワマンを神戸市はなぜ規制するのか。
人口減に直面する神戸、タワマンは「将来の廃棄物」?
東京や大阪に人口が集中する…