月の地下洞窟を発見か 深い縦穴を分析、有人基地の一等地として有望

有料記事

石倉徹也

 巨大な地下洞窟が月面に存在する――。イタリアなどの研究チームが15日、月の縦穴をレーダー分析した結果を科学誌ネイチャー・アストロノミーに発表した(https://doi.org/10.1038/s41550-024-02302-y別ウインドウで開きます)。テニスコートが5面すっぽり入るほどの広さで、将来の月面基地の場として有望だという。

 日本の月周回衛星「かぐや」などの観測により、月面には200以上の深い縦穴が存在することが分かっている。一部は地下に洞窟が広がっているとみられるが、存在は確認されていない。

地下深くに隠された巨大空間

 トレント大のロレンツォ・ブルツォーネ教授らは、月面の「静かの海」にある縦穴(直径約100メートル)に注目した。米月周回衛星LROのレーダー画像を分析したところ、縦穴の西側で反射する電波の輝度が明るくなっていることがわかった。

 これが、穴の西側に洞窟が延びている証拠だという。縦穴に斜めに入射した電波が、洞窟内の床や天井で反射して戻ってきた結果だとし、洞窟を仮定したシミュレーション結果も観測データをよく再現できたという。

 洞窟は深さ130~170メートルの地下にあり、幅45メートル、長さ30~80メートルと研究チームは推測。洞窟内の底は斜面になっている可能性もあるらしい。

 洞窟は、かつて溶岩が流れた名残という。表面が冷えて固まった後も、地下の溶岩は冷えずに流れ続け、その通り道が洞窟になった。洞窟の一部が崩落して縦穴ができ、入り口が生まれたようだ。

■寒暖差300度、強い放射線…

この記事は有料記事です。残り346文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
石倉徹也
科学みらい部
専門・関心分野
数学、物理、宇宙・天文
  • commentatorHeader
    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年7月17日8時3分 投稿
    【視点】

     月面に経済活動、軍事活動が可能になる地下洞窟が確実ということになると、この洞窟の争奪戦が深刻になります。具体的には、アメリカと中国がこの洞窟を確保することを国策の優先課題にすると思います。いずれかの国が月に軍事基地を建設すると、その国の影

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    中満泉
    (国際連合事務次長・軍縮担当上級代表)
    2024年7月17日23時28分 投稿
    【視点】

    人類が月面に長期滞在する時代が現実的になりつつあることを示す、本当にエキサイティングなニュースです。 人類が月に再到達するための計画は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導するアルテミス計画が有名ですが、2026年以降に月の南極付近に再び

    …続きを読む