メディアへの捜索が侵す取材源秘匿 篠田博之さん「報道界は連帯を」

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聞き手・石川智也
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 内部文書を外部に漏らしたとして鹿児島県警の前生活安全部長が逮捕・起訴された事件は、かねて県警を批判する記事を発信してきたウェブメディア「ハンター」(福岡市)への家宅捜索が、端緒だったとみられる。前部長が文書を送ったライターは、ハンターと情報を共有していた。報道機関への強制捜査は極めて異例で、取材源の秘匿報道の自由を脅かし、公益通報の芽をも摘みかねない。既存メディアこそが報道界全体の問題として受け止め対処しなければならない――。メディア批評誌「創」の篠田博之編集長は、そう警鐘を鳴らす。

 今回の事件は様々な意味で、大手メディアのあり方に対する大きな問題提起だったと思います。

 まず、鹿児島県警の前生活安全部長の情報提供先が新聞社やテレビ局ではなかったことを、既存メディアは真剣に捉えるべきです。

 ジャーナリズムの役割である権力監視において、特に全国紙は従来、一定の機能を果たしてきました。しかし今回、ウェブメディア「ハンター」がかなり前から鹿児島県警の問題を指摘していたにもかかわらず、どの社も後追い報道に及び腰でした。再審請求で弁護側に利用されないよう捜査書類の廃棄を促していたり、市民の個人情報を悪用して警察官がストーカー行為に及んでいたり……。その後明らかになった県警の不祥事は本来、地元の権力と距離を保てる全国紙こそが記者を何人も送り込み、徹底した調査報道で追及すべきものでした。

 地方取材網の縮小や取材力の…

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この記事を書いた人
石川智也
オピニオン編集部
専門・関心分野
リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論