県警の内部告発先、なぜ私だった 送られなかった大メディアは自問を

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聞き手・石川智也
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 鹿児島県警は4月、内部情報を元に捜査への批判を発信してきたウェブメディア「ハンター」(福岡市)を家宅捜索し、パソコンなどを押収した。それを端緒に別の情報漏洩(ろうえい)を把握し、前生活安全部長を国家公務員法違反の疑いで逮捕した。言論、表現の自由を脅かす報道機関への強制捜査と取材源の探知は、どのようにして起きたのか。報道界が取るべき対応とは。前部長から内部文書を受け取った札幌市のライター、小笠原淳さんに尋ねた。

 闇をあばいてください――。表紙にそう書かれた10枚の文書が私の元に封書で届いたのは、4月3日のことでした。鹿児島中央郵便局の消印で、差出人は書かれていない。料金不足の郵便物でしたが「これは情報提供だな」とピンときたので、不足額を支払って受け取りました。内容を詳しくは明かせませんが、鹿児島県警の警察署員の盗撮事件やストーカー事案などを告発するものでした。

 私は九州に足場がないため、以前からの寄稿先で、鹿児島県警の不祥事をずっと追及してきた福岡市のウェブメディア「ハンター」に相談すべく、文書をファイル化して送りました。その5日後、鹿児島県警は、曽於署の元巡査長=懲戒免職=による別の内部情報漏洩容疑事件の関係先として、ハンターを家宅捜索します。そして、おそらくその際に押収したパソコン内にあった私からのファイルを端緒に5月末、前生活安全部長を国家公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで逮捕しました。直後に県警から「証拠品を提出してもらいたい」と問い合わせを受け、私に文書を送った人物が誰だったか、この時初めて知りました。

容疑者の言い分、報じる努力したか

 県警は元巡査長と前生安部長…

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この記事を書いた人
石川智也
オピニオン編集部
専門・関心分野
リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論