ドキュメンタリー映画「鯨のレストラン」 ロケ地の石巻市で初上映
国内有数の捕鯨基地がある宮城県石巻市などで撮影したドキュメンタリー映画「鯨のレストラン」(八木景子監督)が28日から、市内のイオンシネマ石巻で上映される。クジラの食文化や魅力を伝え、食料源としてのクジラを考えさせる内容だ。
牡鹿半島のほぼ先端、石巻市鮎川浜の捕鯨会社でクジラを解体するシーンが描かれる。東京・神田のクジラ料理店「一乃谷」ではクジラ肉のすしやハンバーグ、ステーキなどが出てくる。どれもおいしそうだ。店の大将、谷光男さんは仙台市から上京。クジラを多彩な料理に仕立てる。
海に囲まれた日本は、縄文時代からクジラを食べていた。捕鯨が盛んだった戦後の高度経済成長期は、日本人のたんぱく源のトップはクジラで、豚肉や鶏肉、牛肉よりも身近だった。だが、今では全盛期の1%だという。
捕鯨を巡っては国際的な批判もあり、国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨の一時停止を採択。日本は1987年から調査捕鯨に切り替えたが、2019年にIWCを脱退し、商業捕鯨を再開している。
八木監督は、和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米国の映画「ザ・コーヴ」(09年公開)に反論するドキュメンタリー映画「ビハインド・ザ・コーヴ」(15年公開)で監督デビュー。「鯨のレストラン」は2作目だ。
神田のクジラ料理店を訪れる「シン・ゴジラ」の映画監督や、外国人の夫らをともなった通訳、マイケル・ジャクソンのバックダンサーだった女性らとクジラを食べながら語る。日本人研究者や国際機関の責任者にも取材している。
ワシントン条約の元事務局長ユージン・ラポワント氏は「使える資源を最大限に活用することが重要」とし「自分たちの文化、伝統にのっとって使うべきである」と語る。食文化の違いから「食べてはダメだ」というと「自然の贈り物を排除することになる」。
ロケ地の石巻市では初の上映で、ドキュメンタリーが全国展開のシネコンにかかるのは「奇跡だ」と八木監督。9月には米国でも上映予定だ。
「人間はクジラに限らず、生きているものの命をいただいている。食物連鎖の中に、人間もいることを忘れないでほしい」と八木監督。「捕鯨は持続可能で、縄文時代から続くクジラの食文化を守っていきたい」
初日の28日、映画にも登場する捕鯨会社の社長らと八木監督が舞台あいさつする。上映は7月11日までの予定だ。
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