立ちっぱなしで朝早くから夜まで働くなど、厳しい仕事のひとつとされる給食の調理現場。人手不足に拍車がかかる中、冷凍食品を活用して現場の負担軽減に取り組む動きが広がっています。高齢化による介護市場の拡大などで高まるニーズに、企業も効率化で対応する狙いがあります。
4月上旬の午前、神奈川県海老名市の介護老人保健施設「アゼリア」では、入居者向けの昼食の準備が進んでいた。白身魚のバター焼きをほぐしたものに、刻んだニンジンのコンソメ煮をのせる。そのままでは食べられない人向けに一手間加えて仕上げる。デイケアなどを含めて145人分の準備に対して、大鍋を振るうことなく、複雑な調理作業も必要ない。
活用しているのは「完全調理品(完調品)」だ。アゼリアでは昨年9月、調理の外注先を「LEOC(レオック)」(東京)にして、完調品での食事提供に切り替えた。
完調品は、外部で調理して完成した状態で冷凍した食品。施設では温めて提供する。調理に必要なスタッフが減り、作業時間短縮などスタッフの負担軽減にもつながるという。
実際、アゼリアでも調理スタッフは以前は15人がシフトで働いていたが、今は11人に減った。さらに、朝食準備の開始時間が、以前の午前5時ごろから、1時間程度遅くでき、翌日に向けた準備作業も30分から1時間短縮できたという。
アゼリアでは「限られた人数で、子育て中の人や高齢者も無理なく働ける。献立内容、味付けは施設での調理に劣らない」と、レオックの完調品の導入を決めた。
アゼリアの管理栄養士、増田結さんは食事についても「入居者の評判はいい。完調品に対するイメージが変わった」と話す。
レオックは今年3月から調理の受託先で、こうした完調品の活用の提案を本格化させている。調理スタッフの負担軽減は、人材確保にも有利に働くという。
広報担当者は「コロナ後に人手不足が深刻になり、これまで完調品が入りにくかった病院や施設なども関心を示してくれるようになった」と話し、今後の広がりに期待する。
調理スタッフは6人から4人に
福岡県の特別養護老人ホームが委託する給食の調理でも、完調品を使う。
6年前に導入後、大きな鍋やコンロ、調理台だけでなく、冷蔵室、冷凍室も使わなくなった。大鍋でシチューや煮物を作る重労働から解放され、調理スタッフは6人から4人に減った。
5月上旬には昼食約130人分を用意。そのうち約40人分はフードプロセッサーできざみ、約30人分はさらにペースト状にする手間をかけた。調理場では、ごはんとみそ汁を準備した。
昼食準備を始めるのは午前9時半。同11時45分に終わると、夕食の準備を始める前に1時間の休憩が取れるようになったという。
三井物産は、この完調品を提供する大分市の会社と組んで、今年3月から全国の病院や介護施設向けに営業を始めた。「盛りつけをする負担も大きい」という現場の声を踏まえ、調理場で盛りつけの手間もいらない「冷凍弁当」も商品に加えた。
苦境が続く給食業界
セントラルキッチンで刻むな…
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