コウノトリを旗印に有機農業推進 越前市が生産から消費までアピール
コウノトリをシンボルに、越前市が有機農業に本腰を入れている。生産、加工、販路開拓まで、地域ぐるみで進める計画で、近く消費者向けのPR動画の配信も始める。
同市によると、2023年度の有機栽培面積は米を中心に276ヘクタールで全耕地面積の7.7%を占める。全国平均は21年度時点で0.6%。市は国内有数の有機産地をめざし、14日に県内で初めて、国の事業「オーガニックビレッジ」に基づく、推進宣言をした。
有機米は、栽培面積を23年度の135ヘクタールから28年度には170ヘクタールに、販売量を23年度の288トンから28年度には372トンに増やすのが目標。
情報通信技術などを活用する「スマート農業」も進める方針で、水田の画像データを収集・分析して収量や食味の向上につなげたり、ドローンによる有機肥料の散布や遠隔で水を管理するシステムなどで作業の効率化を図ったりする実証実験に取り組む。
県内外へのアピールにも力を入れる。農家の取り組みなどを伝える動画を作成し、月内にもYouTubeの「オーガニック都市 越前市コウノトリちゃんねる」で配信を始める。
県広報課で動画配信を手がけた経験のある北野早希代さん(41)をディレクター兼リポーターに起用。21日にあった初回の撮影では、同市の白山地区で「コウノトリ呼び戻す農法米」を作る恒本明勇さん(77)を訪ね、ハウスで丈夫な苗を育てたり、田んぼにドジョウやメダカが生息できるよう水田魚道を設けたりしている様子を収録した。
月1本ずつ制作し、同地区の農家レストランや、こだわりの加工品などを取り上げていくという。
農林水産省は21年に「みどりの食料システム戦略」を策定し、耕地に占める有機農業面積の割合を50年までに25%に広げる目標を掲げる。そのための施策のひとつが「オーガニックビレッジ」で、有機農業の拡大に取り組む市町村を財政支援する。北陸3県では越前市のほか、富山市、富山県砺波市が「オーガニックビレッジ」宣言をしている。