検察、再審公判でも袴田さんに死刑求刑 弁護側無罪主張 判決は9月
1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審公判が22日、静岡地裁であった。検察側は改めて袴田さんが犯人だと主張し、死刑を求刑した。弁護側は無罪を主張し、結審した。判決は9月26日に言い渡される。
死刑が確定した事件の再審は戦後5件目。過去の4件でも検察側は死刑を求刑したが無罪となっており、袴田さんも無罪となる公算が大きい。
論告で検察側は、袴田さんが金品を奪う目的で殺害現場に侵入し犯行を隠蔽(いんぺい)するなどの目的で4人を殺害した、と指摘。「強固な殺意に基づいた冷酷で残忍な犯行。生命軽視の態度は極めて顕著だ」と批判した。
袴田さんは死刑囚として長い間身体を拘束された影響で精神を病んで意思疎通が難しく、出廷を免除されているが、検察は「量刑を変更させるものではなく、刑の重さは犯した罪の責任に応じて決められるべきだ」と述べた。
最大の争点で、袴田さんの逮捕から約1年後に見つかった「5点の衣類」については「被告の犯行時の着衣だ」と改めて主張した。衣類に付着した血痕の色の変化をめぐる弁護側の実験の結果を根拠に、捜査機関による捏造(ねつぞう)の可能性を指摘して再審開始を認めた昨年3月の東京高裁決定は「証拠評価を誤った」と批判。「捏造は実行不可能で非現実的だ」と述べるなど、従来の主張を繰り返した。
弁護側は非難「捜査機関によって犯人にさせられた」
一方の弁護側は、検察側の主張を再審請求審の「蒸し返し」と非難。再審公判での審理で「5点の衣類」が捏造であることはよりはっきり確認され、血痕のDNA型鑑定などの結果からも「袴田さんのものでない」と改めて主張した。
その上で、被害者4人に数十カ所の傷があったことから複数犯による事件だとし、袴田さんは工場の寮に住み、元プロボクサーだったことなどから「捜査機関によって犯人にさせられてしまった」と指摘。裁判官に対し「無罪判決だけでなく、裁判で明らかになった捜査機関の不正、違法な行為をはっきり認定すべきだ」とも訴えた。
事件では、強盗殺人や放火などの容疑で袴田さんが逮捕・起訴され、公判では一貫して無罪を主張した。一審・静岡地裁は68年に死刑を言い渡し、80年に確定。その後、弁護側の第2次再審請求を受け、2014年に静岡地裁が再審を決定。最高裁の差し戻しを経て、23年に東京高裁も再審開始を支持した。
過去の再審公判で検察側は、1980年代に死刑囚が無罪となった4事件で確定審と同じ死刑を求刑。茨城県利根町で起きた強盗殺人「布川事件」でも、確定審と同様に無期懲役を再び求刑したが、判決は無罪だった。
一方、「東京電力女性社員殺害事件」や「松橋(まつばせ)事件」などでは、有罪立証をしなかった。
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