アンモニアを石炭に混ぜて火力発電所で燃やせば二酸化炭素(CO2)の排出を減らせる――。そんな試みがこの春、日本で本格的に始まった。政府は「脱炭素化戦略」を支える手段とし、輸出も視野に入れる。だが主要7カ国(G7)が採択した共同声明で「脱石炭火力」への道筋が示されたばかり。普及には課題も多く、環境団体からは「悪手」と批判も出る。
東京電力と中部電力の火力発電部門を統合したJEARが運営する碧南火力発電所(愛知県)で、4月1日から石炭とアンモニアの「混焼」が始まった。ボイラー5基で計410万キロワットの出力がある国内最大級の石炭火力発電所だ。
アンモニアは燃やしてもCO2が出ない。6月までの試行期間中、最大2割まで混焼率を高め、燃え方などのデータを集める。2027年度にも商用化し、発電時のCO2排出量を2割減らす。
政府は50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を掲げる。JERAは発電量の2割超を石炭に頼っており、それまでにCO2を出さない「ゼロエミッション火力」を実現するという。核となるのが、アンモニアだけを燃やして発電する技術の確立だ。
アンモニアの混焼には、ほかの大手電力も前のめりだ。九州電力は昨年に2度にわたってテストをした。中国電力も過去に試行し、他社も導入を検討する。政府はインフラ輸出の一環として他国に売りこむ構想をもち、石炭火力に頼る途上国で需要があるとみる。
その背景には、大量のCO2…