俳優・ミュージシャンの石橋凌が追求する、飽くなき「人間への興味」

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野城千穂
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 ミュージシャンと俳優として活躍を続ける石橋凌。演技という「うそ」をつく俳優と、自らを偽りなくさらけ出すミュージシャンは、表現者という共通項はあれど「全く違う仕事」と言い切るが、どちらも根底にあるのは生身の人間に対する飽くなき興味だという。

 キッとにらまれたら震え上がりそうな「こわもて」でもある。だからか、打診される役柄は「8割は悪役」。最近では漫画原作のテレビドラマ「やんごとなき一族」(2022年)で名家の冷徹な当主を演じた。「初回放送後、いつも詞を書いたり台本を読んだりするのに通っている喫茶店のウェートレスさんから『本当に腹立たしい』と怒られまして。謝りながら、心の中ではしめしめと思いますね」

 ロックバンド「A.R.B.」のボーカルとして1978年にデビュー後、松田優作との出会いが縁で、映画の世界に足を踏み入れた。松田の死後しばらくは、A.R.B.の活動を停止し俳優業に専念した。

 「優作さんからは、映画の表現はカメラに映った瞬間、刑事なら刑事、ヤクザならヤクザに映らなきゃいけないと教わった」

 「そのために日々の生活の中で何かあったら、その時の自分の感情を記憶し、表情を鏡で見て全部ストックしておいて、ある瞬間に出す。そうやって人物に同化し、転化していくことを理解し実践していたのが優作さんだった」

 時には、日常の「ストック」では対応しきれない役もある。殺し屋の役を演じるにあたって、弁護士立ち会いのもと、かつて敵対する暴力団組員を襲撃して服役した「本物のヒットマン」に自らインタビューをしたこともあるという。

 なぜヤクザになり、凶行に及…

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