足搔き続けて「最後の大舞台」へ 藤井聡太に挑む山崎隆之の無二
勝負は決した。
彼が黄金の切符を手中に収めようとしている時、彼の言葉を思い出していた。
2023年12月23日。「オールスター東西対抗戦」前日会見の壇上だった。
棋界を代表する星々のような棋士12人が「どんな一年だったか」という問いに答える時間。山崎隆之だけ不思議な回答をした。
「自分自身、いつもあがいている感じで、自分の内面と折り合いをつけながら、考え中の1年です」
あがく。漢字で「足搔く」と書きたくなる自動詞は、山崎が以前から好んで用いる表現だった。
藤井聡太や羽生善治らが横にいる場所では、定跡から外れた印象のある表現だったが、だからこそ山崎の言葉なのだと思った。
3年前にしたインタビューでも何度も繰り返し語っていた。
「力を持って、足掻いて足掻…