絵本「だるまさん」、創造性の泉は「愛するということ」 記者サロン

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山内深紗子
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 「だるまさん」シリーズで知られる絵本作家は、28年間特別支援学校の教員として活躍しました。その作品の世界や、尽きぬ「創造性の泉」について、担当編集者の沖本敦子さん(46)が、配信中の記者サロン「絵本作家かがくいひろしさんの世界」で、語ってくれました。

 かがくいひろしさん(1955~2009)は、特別支援学校の教員を経て、50歳で絵本作家としてデビューし、54歳で急逝する間に16作品を残した。「だるまさん」は発刊15周年を迎え、シリーズ累計発行部数は900万部を超えた。全16作品が絶版にならず、読み継がれている。

 沖本さんは20代後半にかがくいさんと出会った。「誰に対しても心が開かれていて、相手の良いところを見つけられる天才」と振り返った。

打ち合わせはファミレス、圧はゼロ

 打ち合わせは、ファミレス。沖本さんが喜べば喜ぶほどに、かがくいさんは「時間大丈夫? もういっこ見ちゃう?」と、次々に面白いラフを見せてくれた。たっぷり笑って、帰りの電車に揺られていると、心がふくふく膨らみ、根拠のない「何でもできちゃうぞ」というエネルギーみたいなものが湧いてきた。

 特別支援学校ではどんな先生だったのか。就職したのは、全国に特別支援学校が開校していた時期だった。生徒一人一人に教材や遊びを考え、「できること」と笑顔を増やすことを重んじていた。

 そのまなざしとは? 大学時代の学生寮のベッドにこんなメモを貼っていた。

 《効果があればやる、効果がなければやらないという考え方は合理主義といえるでしょうが、これを人間の生き方にあてはめるのは間違いです。子どもたちは、ここでの毎日毎日が人生です》

 ドイツの障害のある子どもたちも生活していた施設の修道女の言葉だった。

 沖本さんは、かがくいさんの創造性は、「気前のよさ」「みんなに開かれている感じだった」と話した。「とめどなくあふれ出るものを、気前よく周りの人に与えていく。人を圧倒する感じではなく、『一緒にやる?』と誘いかけ、気づけば、相手が奥底に持っている可能性や創造性を、芽吹かせてくれる」

なぜ与え続けても枯渇しなかったの?

 なぜ与え続けても、創造性の泉は枯れなかったのか。母親の介護や、生徒の中には亡くなる子もいて現実はつらさや苦しさもあった。

 「感受性も強く悲観的になることも。でも、現実の厳しさを振り切るかのように創作の世界に入っている様子が残された創作ノートからうかがえます」「悲観を創作の力で笑いや明るさに変えて、未来をつくっていった感じがします」

【5月31日まで配信中】記者サロン「かがくいひろしさんの世界」

絵本作家・かがくいひろしさんが生み出す世界について、編集者の沖本敦子さんがエピソードを交えてお話しします。

 沖本さんにとって創造性の泉…

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