彼女と夢見た「あきらめなくてもいい未来」 同性婚訴訟の5年に思う

有料記事ダイバーシティ・共生

臨床心理士・みたらし加奈
[PR]

Re:Ron連載「みたらし加奈の 味方でありたい」第7回

 【現在、同性の方とお付き合いをしています。

 パートナーのことは心の底から愛しています。だけど、病院や役所で自分たちの間柄を聞かれた時に、家族だと言えないことがつらい時もあり、このまま家族として最期を迎えられなくなるのは、孤独感さえ感じます。

 私は、異性の方とお付き合いができませんが、ふとした時に、無理やり異性の方と家族を作らなければならないのかもしれないと追い込む時があります。同性婚への実現へ向けて、何をすればいいでしょうか?】(相談者・白飯)

 2019年の2月14日、私の目に一つの記事が飛び込んできました。

 「好きな人と一緒にいたいだけ」 同性婚提訴 仲間の苦しみ代弁――。

 同性婚ができないことの違憲性を問う初の裁判が4地裁で始まることになり、当時の原告の方の記者会見の様子も報道されていました。

 仕事帰り、疲れながらスマホに目を落としていた私は、すぐには記事の見出しの文字を認識できず、しばらくぼうぜんと立ち尽くしていました。まだ体が冷える時期、自分の手が震えているのが寒さなのか、それとも心から湧き上がるものなのか、見当もつきませんでした。

 記事を読み、すぐに当時の彼女に連絡をしました。そのあと直接会ったとき、「信じられない、もうあきらめなくていい未来がくるかもしれないんだ」とつぶやいた彼女の顔を、私は忘れられません。だってその言葉を聞いて、はじめて「あきらめてきた」大切な人たちの顔が浮かんだのですから。

 彼女と付き合うまで、私はずっと異性愛者として生きてきました。当時は漠然と「社会は変わってきているし、同性婚も早くできて、世の中がハッピーになればいいのにな」なんてのんきに考えていたんです。でも現実はそんな悠長な話ではなかった。

 カミングアウトができずに大…

この記事は有料記事です。残り3111文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

Re:Ron

Re:Ron

対話を通じて「論」を深め合う。論考やインタビューなど様々な言葉を通して世界を広げる。そんな場をRe:Ronはめざします。[もっと見る]