冷たい視線、言えなかった出身地 母の死を機に向き合った故郷の歴史

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田中久稔
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 初夏の海は青く輝き、山の緑は明るい。川畑俊夫さん(73)は、生まれ育った街から望む景色が好きだ。

 「風光明媚(めいび)ですから」

 地元の簡易郵便局の仕事をし、自治会役員として地域活動に精を出す。菜の花を植えて油を取り、学校給食用に寄付。まちぐるみの行事も裏方で支えている。

 ふるさとを誇りたい。20年前に帰郷してから、その気持ちは年を追うごとに強まっている。それまでの30年は照明器具メーカーの社員として各地を転々とした。仕事に没頭していたせいもあるが、地元はどこか遠い存在だった。

 出会った人に出身地を尋ねられるのは小さな苦痛だった。

 「熊本」と答え、その先の地…

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