3月15日、東京都府中市。創業53年の設計会社が営業最終日を迎えた。
30人余りの従業員が働いた事業所で、他社に譲り渡す3Dプリンターやパソコンが運び出された。廃棄するオフィス用品や紙くずの山から、創業者の男性(78)が1枚の紙を拾い上げた。従業員みんなで遊んだボウリング大会の成績表だ。「懐かしいなぁ、これ。アットホームな会社だったのに」。目に涙がにじむ。
夕方に一人、また一人と去っていく従業員に、「ご苦労さん」と声をかける。最後にひとりでガチャッと鍵をかけ、会社の幕は静かに下ろされた。
M&A仲介業者に勧められた事業承継の契約から、倒産を決めるまで1年もかからなかった。
うたい文句は「従業員を守る」
機器を設計し、試作品もつく…