逆さの文字も愛らしい…小さな印刷会社が紡ぐ活版印刷、じわりと人気

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鈴木優香
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 鉛製の文字がひとつずつ、壁にずらりと敷き詰められている。タテもヨコも数ミリしかないこの文字は、活版印刷で使う活字たちだ。

 その数は、ひとつの棚にざっと数万個。その棚が右にも左にも奥にも何枚も連なっているのだから、途方もない数だ。

 「夜……、あれ、夜って部首なんやったっかいな」

 木枠に振られた漢字を指で左から右へと追いながら、眼鏡をかけた山田善之さん(82)がその一文字を探していく。

 「夜、夜、夜、夜……あれ、ないなぁ」

 お目当ての活字が見つからないのがまるで楽しいことかのように、にこにこと笑いながら、辞書を開いて部首を確認し始める。あちこちから集めた活字だから、きれいに並んでいるわけではないという。

 「銀河鉄道の夜」という6文字を集めるだけで、あっという間に10分が経過した。こうして活字を集めて並べ、印刷するための「版」を作り、インクをつけて紙に刷っていく。

竹やぶかき分け探した活字、夫婦2人で再出発

 こぢんまりとした弁当屋や仏…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年4月15日21時36分 投稿
    【視点】

    活版印刷で作られたものには、手間と時間がある。 文字数が少ないからだろうか。活版印刷で作られた句集や歌集を手にすることがある(目の前の本棚にある句集の奥付を見ると、活版印刷所として東京にある活版印刷工房の名前が刻まれていた)。活版印刷の名

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    太田泉生
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=人権)
    2024年4月15日13時24分 投稿
    【視点】

    佐賀支局の記者だった2004年に、店を閉じることにした伊万里市の活版印刷店を取材した。 主な仕事は名刺の印刷だったが、顔写真を入れたり新しい字体を入れたりと、活字では応じられない注文が増えた。とどめとなったのは電子メールの普及で、店にある活

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