奈教大付小の教育は「不適切」か 研究者らが上げる疑問・反発の声

机美鈴

 奈良教育大付属小の教育が大学側によって「不適切」と認定され、「開かれた学校」にするという名の下に教員の公立小への出向が始まった。一連の対応について、教育界からは疑問や反発の声が上がっている。

 「不適切・法令違反とまで言えるかどうかについては、学問的な検討が必要」。教育研究者たちは3月、付属小の教育を「不適切」とした大学の調査結果について緊急声明を発表した。

 その趣旨は、学習指導要領は細部にわたり教育課程を規定するものではなく、大綱的基準である▽国立大付属学校は実験的・先導的な教育が期待される▽付属学校では教師が積極的に研究を行い、多くの研究者も関わっている――というもの。声明の賛同者は研究者を中心に500人を超えた。

 3月31日、奈良市内で「奈良教育大付属小の教育を守る市民集会」が開かれた。緊急声明の呼びかけ人を務めた研究者たちが登壇。大学の姿勢に疑問を投げかけた。

 中嶋哲彦・名古屋大名誉教授は「本来何より優先すべきは子どもの教育の保障のはず。大学は正当な理由なく教員を強制的に出向させようとしている。本末転倒だ」と述べた。

 「実験的な試みや工夫が未来の学習指導要領に反映される。肯定的に評価する面もあるはずなのに、大学の調査報告書は一面的で一方的だ」とし、奈良県教育委員会の求めに応じて調査に至った判断についても、「不当な支配を許した。全国の教育現場を萎縮させる」と批判した。

 折出健二・愛知教育大名誉教授は「教育大学でありながら学習指導要領を点検の手段に用いて、教員を統制・管理する口実にしている。その向こうにあるのは、国や文部科学省に従い、校長の権限のもと、文句を言わないことを是とする教育だ。子どもたちの未来はどうなるか」と指摘した。

 集会を主催したのは、奈良教育大の卒業生や同小の元教員たちから成る「奈良教育大付属小を守る会」。参加者はオンラインを含めて400人を超えた。通路まで人があふれ、主催者は急きょ第3会場まで手配した。

 事務局長の山崎洋介さんは同大出身。奈良市内の小学校教諭を経て、大学院で教育学を学ぶ。「一連の経緯には疑問も多い。情報公開を求めるなどして、大学が実施した調査自体も検証していく」と話す。

 寄せられる批判や疑問にどう向き合うのか。

 大学の宮下俊也学長は1日、「本校(付属小)が築いてきた良さや特色を維持しつつ、国立の付属小としての責務を果たす」とのコメントを発表した。今後、改善の進展を3カ月ごとに報告するとしている。

 新年度から付属小に着任した遠藤孝晃校長は5日、取材に応じ、「改善すべき点は改善しつつ、まずは子どもの不安を解消したい。保護者ともお互いを理解しながら運営していけたら」と話した。(机美鈴)…

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