南米へ渡った被爆者知って ブラジルの団体寄贈の資料、広島大で展示

編集委員・副島英樹

 移民として南米に渡った被爆者の資料を紹介する「イペの花の下の被爆者」展が、広島大学霞(かすみ)キャンパス(広島市南区)の医学部医学資料館で5月17日まで開かれている。ブラジルの被爆者団体から広島県医師会に昨年寄贈された約30件の資料が展示されている。

 なかでも目を引くのは、1988年に在ブラジル原爆被爆者協会が実施したアンケート「在南米原爆被爆者調査」の原本。協会の理事長だった森田隆さんらがブラジル、ボリビア、アルゼンチン、パラグアイ、ペルー計5カ国の被爆者188人に協力を求め、139人から回答を得たものだ。資料の「里帰り」にはサンパウロ在住の被爆者、渡辺淳子さんが尽力した。

 資料整理に協力した広島大学原爆放射線医科学研究所(原医研)の久保田明子助教によると、ブラジルから届いた資料は段ボール6箱で、このうちアンケートは1箱半を占めていた。

 回答を解析すると、被爆地は広島が62%、長崎は38%。被爆者健康手帳の所持者は32%。各種被爆者手当について「どれもうけていない」が131人に上り、「手当のことを知らなかった」(43人)、「申請が認められなかった」(30人)の回答が目立つ。援護から取り残されていた在外被爆者の実態が浮かぶ。

 イペはブラジルの国花。日本からのブラジル移民は、イペの花を望郷のしるしのように「ブラジルの桜」と呼んで親しんだという。久保田助教は「被爆の悲惨な記憶を抱えながらも、現地に溶け込んで生き抜く被爆者たちのたくましさや粘り強さにも触れてほしい」と話している。

 現地の邦字紙の記事や出版物、DVDなども展示。入場無料で午前10時~午後4時(土日祝日は閉館)。(編集委員・副島英樹)…

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