KADOKAWAのトランスジェンダー翻訳本 刊行中止をどう考える

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二階堂友紀

 KADOKAWAが発売予定だった翻訳本「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」が昨年12月、「差別本だ」との批判があがるなか刊行中止になった。同社はなぜ出版をとりやめたのか。一連の経緯をどう考えればいいのか。(二階堂友紀)

 昨年12月3日、KADOKAWAの翻訳チームが、Xなどで同書の発売を告知した。「幼少期に性別違和がなかった少女たちが、思春期に突然“性転換”する奇妙なブーム」「ジェンダー思想(イデオロギー)に身も心も奪われた少女に送る母たちからの愛の手紙」などと宣伝した。

 原著は米国のジャーナリスト、アビゲイル・シュライアー氏が、トランスジェンダーの子どもを持つ親などに取材し、2020年に出版した。「トランス差別本」として物議を醸した経緯があり、同社は「タブーに挑む大問題作!」とも紹介した。

 これに対しSNSでは「色んな考え方を読むべきだ」との声があがる一方、「トランスジェンダーに対する誤解と悪意がある」「KADOKAWAがヘイター化」などと抗議が広がった。

 保守系のインフルエンサーが4日、「角川書店よりゲラが送られてきた。女子のトランスジェンダーブーム。背後にいるのはあの勢力」などとXに投稿すると、「確信犯的な差別」と批判はさらに強まった。同社関係者によると、社内の資料には、ゲラの送付先として、複数の保守系論客らの名前とXのフォロワー数が記されていたという。

 同社は5日夜、学芸ノンフィクション編集部名で刊行中止を発表。「欧米での事象等を通じて国内読者で議論を深めていくきっかけになれば」との考えだったが、「タイトルやキャッチコピーの内容により結果的に当事者の方を傷つけることとなり、誠に申し訳ございません」と陳謝した。

 出版の権利を得て翻訳を進め、発売直前に至った本の刊行中止は異例。だが、同社はこれ以降、対外的な説明をしていない。

執行役「相応の準備、怠った」

 同社関係者によると、当初は社内で説明がなく、「作家からの問い合わせにどう答えればいいのか、対応に苦慮している」などと不満の声があがった。その後、夏野剛社長と、出版部門の最高責任者(CPO)を務める青柳昌行執行役が8日付で、社員向けの声明を出した。

 朝日新聞が入手した声明文に…

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この記事を書いた人
二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 LGBTQ 政治と社会
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    仲岡しゅん
    (弁護士)
    2024年3月29日8時2分 投稿
    【視点】

    日本での性別移行医療に関して言うと、そもそもこの本の謳い文句とはかなり事情が異なる。 現在の日本の医療実態として、未成年のトランスジェンダー当事者に対しては、原則的に不可逆的な医療は行われていない。 行うことがあったとしても、本人の身体違和

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