機能性表示食品、安全性は審査されず 紅麹サプリ問題に映る国の思想

有料記事「紅麴」サプリ問題

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神里達博の「月刊安心新聞+」

 小林製薬大阪市)は22日、「紅麹(べにこうじ)」を用いた5種のサプリメントの自主回収を発表、同時に使用中止を呼びかけた。摂取した人から腎疾患を発症した例が出ているのだ。24日までに合計26人の入院が確認されたという。いずれの製品も「悪玉コレステロールを下げることに役立つ」などと書かれた「機能性表示食品」だ。

 紅麴とは、蒸し米にベニコウジカビを植え、発酵させて作る麴の一種である。古くから東アジア地域で食品の着色料として使われてきた。また、中国の古典的薬学の集大成「本草綱目」にも記載があり、薬としても珍重されてきた歴史がある。

 では、紅麴とコレステロールはどういう関係があるのか。そしてそれはどのように明らかにされたのか。

 1970年代、当時の三共(現在の第一三共)の遠藤章氏らのグループは、コレステロールを抑える薬を開発するため、数千種類の微生物を探索した。その結果、青カビの一種からコレステロール合成に関わる酵素を阻害する物質「メバスタチン」を発見する。その後、遠藤氏は大学に移り、メバスタチンと化学構造の似た物質を紅麴から分離、その一つに「モナコリンK」と名付けた。

 同じ頃、この研究に注目し、三共からデータの提供を受けて研究を進めていた米国の製薬会社メルクのチームが、「ロバスタチン」という物質を別種のコウジカビから発見する。後にモナコリンKとロバスタチンは同じ物質だと判明するが、諸事情からメルクが先に商業化に成功した。

 その後、多数の「スタチン系」の薬が開発された。今では世界で毎日4千万人が飲んでいるとも言われる、非常にポピュラーな薬である。

 というわけで、紅麴には元々、天然のモナコリンK=ロバスタチンが含まれているため、その効能の程度はともかく、コレステロール抑制効果が表れる可能性はあるのだろう。

 一方で、ベニコウジカビの一部には「シトリニン」という腎障害などを起こす毒物を産生する株がある。実際、EUの当局は2014年にすでに、紅麴を使ったサプリメントに含まれるシトリニン濃度の基準値を定め、注意喚起を行っている。

 だが報道によると、小林製薬はシトリニンを産生しない株を使っており、製品からも検出されていないという。不思議な話だが、もしかすると、未知の類似の物質が含まれていたのかもしれない。いずれにせよ、原因究明が待たれるところだ。

 ところで、「役所のお墨付き」のように見える「機能性表示食品」なのに安全性が担保されていないのはなぜか、と思った方も多いだろう。

 この点を考えるには、まずは…

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