50年前の本に、同じ問題が 繰り返された「高齢単身女性の貧困」

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社会部・二階堂友紀

 国際女性デーの3月8日朝、この日を象徴するミモザの黄色い花が朝日新聞の題字を彩った。しかし、1面には、その美しさをかき消すような見出しが並んだ。「単身の高齢女性 4割貧困」「20代から男女賃金差」「武器持たぬ女性 いつも犠牲に」。これが私たちの社会の現在地だ。

 高齢単身女性の貧困問題を伝える記事を担当した。もともと問題意識を持っていたわけではない。女性デーに向けた企画を考えているとき、偶然知った。

 年金は納めた額に応じて給付する仕組みをとる。男女の賃金格差や育児・介護に伴う女性の離職率の高さなど、労働市場のゆがみを考えれば「女性の低年金」は当然の帰結だ。しかも、年金は夫婦世帯を基準に設計されている。日本社会のジェンダー格差が煎じつまった問題――。それなのに全く注目してこなかった自分を恥じた。

驚くほど重なった戦後史

 歴史は繰り返されてきた。1…

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この記事を書いた人
二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 LGBTQ 政治と社会
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年3月26日14時23分 投稿
    【視点】

    この記事に出てくる『ひとり暮らしの戦後史』が出版された1975年は、国際女性年だ。約50年前の第27回国連総会(1972年)で1975年を国際女性年とすることが決定され、女性の地位向上の促進のために世界的規模で行動することが提唱された。

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    真鍋弘樹
    (朝日新聞フォーラム編集長=社会、国際)
    2024年3月26日14時40分 投稿
    【視点】

    終戦直後に10代後半~20代だったために結婚相手が少なく、単身で戦後を生き抜いた約100万人の女性について、「驚くほど、今の問題と重なる」と見抜いたのは、筆者の慧眼だと思います。 日本は戦後80年が経とうとしても、まったく同じことを繰り返

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Think Gender

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男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]