ヒグマの個体数管理にシフト 北海道が34年ぶりに政策変更

松尾一郎
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 道内で人里近くに出没したヒグマによる被害が相次いでいる問題で、専門家や行政関係者でつくる「北海道ヒグマ保護管理検討会」は25日、会合を開き、問題を起こすヒグマだけを駆除するのではなく、人里周辺でのヒグマの総数を減らす個体数管理にシフトする方針を決めた。今後、道内の施策に反映される。道野生動物対策課によると、34年ぶりの本格的な政策変更になるという。

 道などによると、戦後ヒグマによる被害を減らす目的で捕獲を奨励していた時期が続いたが、一部の地域で個体数が減りすぎて絶滅の可能性がでてきたため、1990年に春グマ駆除を中止した。それ以来、生息数は増加してきたが、近年、農業被害や目撃通報件数が増え、人身被害が出るケースも目立ち始めた。人間社会とのあつれきを生む問題個体を駆除するだけではなく、人里近くにすむヒグマの総数を減らす必要性がでてきたと判断し、この日の会合で専門家らも同意した。

 この日の会合で明らかにされた22年末時点でのヒグマの推定個体数は全道で1万2175頭(下限6264頭~上限2万1347頭の中央値)。1990年の中央値との比較で約2・3倍に増加し、すべての地域で「絶滅が危惧される水準にない」と判断されている。

 今後、ヒグマの生息状況についてより詳しいモニタリングを行うほか、管理のためのゾーニング(区域分け)について検討する。また、次回5月の検討会会合で、ヒグマと人の共生に向けて必要な具体的な捕獲頭数といった数値目標についても検討していくという。

 座長の佐藤喜和・酪農学園大学教授は、今回の政策変更について、「北海道のヒグマと人の関係の状況を考えると、農業被害や市街地への出没件数が増えており、個体数全体も順調に増えている。潜在的に問題を起こす個体も含めて捕獲しながら、個体数増加を止めていくことで、問題を減らしていこうという考え方にすすんだ」と話している。(松尾一郎)

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