「打ち出の小づち」振り続けた日銀 11年の異次元緩和が払うツケ

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編集委員・原真人

 11年もの長きにわたって続けられてきた日本銀行の「異次元緩和」とは何だったのか。植田和男総裁率いる日銀が、緩和縮小へとようやくかじを切った。

 とはいえ、異常な金融緩和状態がこれだけ長きにわたって続けられてきたツケはあまりに大きい。

 日銀がおこなってきた禁断の財政ファイナンス、つまり日銀が紙幣を刷って政府財政を支える行為によって、政府が発行する普通国債の残高は異次元緩和が始まった2013年度からの11年間で371兆円も積み上がった。政府予算の3年分である。それをまるまる借金に頼ったのだ。

 いまや政権・与党も、野党も、それほど政府の借金膨張に鈍感になってしまった。この政治の劣化に異次元緩和の長期化が影響しているのはまちがいない。

長期的なカネ余り、マンション高騰の背景に

 この間、平均的な国民の所得や生活水準がそれほど向上したわけではない。それなのに日経平均株価は史上最高値を更新し、東京23区内の分譲マンションの平均価格は1億円を突破した。

 資産価格の高騰の背後にはいくつかの要因があるとはいえ、異次元緩和による長期的なカネ余りの演出なくして起こりえなかった現象である。

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 政府・日銀がこの間やってき…

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    加谷珪一
    (経済評論家)
    2024年3月19日16時38分 投稿
    【視点】

    今回の日銀の決定は、これから長く続く、金融正常化に向けたスタートラインに過ぎません。経済規模をはるかに超えるマネーの供給を際限なく続ければ、いつか購買力の爆発的な増加、つまり制御できないインフレをもたらすことは確実です。このところ歴史的な水

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