学者らの指摘で罰則は消えた 相模原市の人権条例案、策定過程が判明

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三木一哉

 2016年に津久井やまゆり園事件があった相模原市が制定をめざす「人権尊重のまちづくり条例」案の策定過程が、朝日新聞の情報公開請求で明らかになった。市が作成した素案ではヘイトスピーチへの罰則として50万円以下の罰金が盛り込まれていたが、行政法学者や顧問弁護士による「セカンドオピニオン」の結果、罰則は消えていた。

 今回の条例案をめぐっては、本村賢太郎市長が人権問題の専門家や法学者などでつくる市人権施策審議会に諮問。審議会が昨年3月に出した答申では、ヘイトスピーチへの罰則や独立性の高い人権委員会の設置などが盛り込まれた。だが、市が議会に提出した条例案にはいずれも盛り込まれず、審議会の委員が公開質問状を出す事態になっている。差別問題に取り組む市民団体も「答申を反映した条例を」と抗議している。

 情報公開請求で開示された文書によると、市人権・男女共同参画課が昨年6月ごろに作成した「条例(素案)」には、罰則も独立性の高い人権委員会も盛り込まれていた。

 素案では、外国にルーツがある「本邦外出身者」に対するものに限定されたもののヘイトスピーチを禁止し、市長の命令に違反した場合には50万円以下の罰金を科す規定や、差別的言動を防止するため、市の公的施設の利用を制限する基準を設けることを盛り込んでいた。人権委員会は市長の諮問の有無にかかわらず差別事案の調査ができると定め、答申に近い内容だった。

 一方、差別的言動の拡散防止措置は、本邦外出身者と障害者への差別に限定した。性自認や民族差別などに関わる市内の団体にアンケートをした結果を踏まえたという。

 だが、素案には専門家から異論が寄せられる。

学者「裁判所を説得するのは難しい」

 7月26日付の「学識経験者…

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この記事を書いた人
三木一哉
横浜総局|相模原地域担当
専門・関心分野
相模原の歴史、東アジアと日本のかかわり、公共交通など