受け流されてきた容姿への「からかい」 男性学で読み解く麻生氏発言
ルッキズムの向こうへ④ 男性学・西井開さん
「そんなに美しい方とは言わない」「おばさん」。麻生太郎・自民党副総裁が講演で上川陽子外相を評した一連の発言に潜むのは、外見で人を評価する「ルッキズム」。男性性が抱える諸問題を考察する「男性学」の観点から見える問題とは。『「非モテ」からはじめる男性学』の著書がある西井開さん(34)に聞きました。外見への言及が「からかい」として流され、差別発言なのに「無効化」される構図、聞く側の姿勢についても問いかけます。
――麻生氏の発言をどう受け止めましたか。
ルッキズムと女性差別が交差した、問題ある発言だと思います。
特に気になったのは、ウケを狙った漫談のような口調で話している点です。外見をめぐる否定的な言葉が「笑い」の中で出てきているわけですよね。
――身体的特徴に言及して笑いをとるといったコミュニケーションは今回に限りません。
ここには「からかい」を軸にしたコミュニケーションの問題がかかわっています。
男性同士で自分たちの悩みや傷つきについて語り合うグループを定期的に開いていますが、多くの参加者たちが身体的特徴をあげつらったからかいやいじりを受けていることが見えてきました。とりわけ学生時代、男子集団の中で「チビ」「デブ」「ハゲ」、さらには「体毛が濃い」「運動ができない」「色が白い」「声が高い」といったからかいが繰り出されているんです。学生時代にからかわれた経験がある人も多い。その人の身体的特徴はどうしようもないことなのに、それをおとしめることが日常的な会話になってしまっています。
――なぜでしょう。
どこからが差別か
誰か1人をからかって笑いが…