所有者不明のマンション「空き部屋」売りやすく 法務省が新制度検討

石川春菜
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 分譲マンションで、住んでいた人が亡くなって相続人がわからないなど、所有者がわからないまま放置される「空き部屋」が問題になっている。こうした部屋の管理・売却を進めやすくするため、新しい制度の検討が進んでいる。法制審議会(法相の諮問機関)は2月、新制度を設けることを区分所有法の改正要綱に盛り込み、答申した。

 相続を放棄されるなどして相続する人がいない場合、これまでは管理組合が「債権者」として、裁判所に「相続財産清算人」(旧・相続財産管理人)の選任を申し立て、部屋を売却できれば管理費などの滞納分も回収できた。

 ただ、亡くなった人の負債を含む全財産を調べたうえですべて処分する仕組みのため、ほかの債権者との関係などによっては個々の財産をどうするか決めるまでに時間がかかった。管理組合が支払う報酬の負担も大きかった。

 今回の法改正では、亡くなったり、所在がわからなくなったりした人の財産のうち、マンションの部屋だけを清算できる「所有者不明専有部分管理人」制度の創設をめざす。所有者がいない、所在が不明な場合や、そもそも所有者がわからない場合、裁判所に申し立てて、必要性が認められれば選任される。裁判所の許可があれば売却もできる。

 マンション以外の財産は対象外のため、相続財産清算人より短期間で終わり、支払う報酬も少なくなることが見込まれるという。

 国土交通省のマンション総合調査(2018年度)によると、所有者の所在がわからなかったり、連絡がとれなかったりする部屋が「ある」と管理組合が答えたマンションの割合は3・9%。1979年以前に完成したマンションに限ると13・7%にのぼり、そうした部屋が2割を超えるところも5・3%あった。

 築40年以上の高経年マンションは、2022年末時点で約126万戸。32年末には2・1倍の約261万戸となる見通しで、こうした空き部屋がさらに増える恐れがある。

 所有者がわからない土地や建物をめぐっては、2023年度施行の改正民法で、個々の土地や建物に限った財産管理制度ができている。「所有者不明専有部分管理人」は、その「マンション版」ともいえる仕組みだ。(石川春菜)

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