輪島市で職員の約8割「過労死ライン」超え 被災自治体の過酷な実態

有料記事能登半島地震

小島弘之 小川聡仁 吉村駿 石原剛文 米田悠一郎
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 能登半島地震から2カ月。元日から災害対応を続ける自治体職員の過酷な長時間労働の実態が明らかになってきた。1月の時間外勤務(残業)が「過労死ライン」とされる100時間を超えた職員が、約8割に達した市町もある。

 被害の大きかった石川県内では、輪島市で管理職を除く事務職の正規職員計218人のうち、1月の時間外勤務が100時間を超えた職員が167人(約77%)に達した。時間外の平均も約148時間と、過労死ラインを大きく上回った。

 市によると、災害対応の中軸である防災対策課の多忙さが目立ったという。昨年1月の時間外勤務が100時間を超えた職員はゼロ、平均は約15時間だった。

 市職員の一人は、発災直後は多くの職員が家に帰れず、庁舎の床に寝袋を敷いて寝たり、机に突っ伏して仮眠をとったりしていた、とふり返る。自宅が全壊した職員もいるなか、この職員は「業務優先で頑張ってきた」と話す。

 穴水町は集計中だが、町総務課の担当者によると、1月の時間外勤務が100時間を超えた職員は「ざっと8~9割」という。同じく集計中の珠洲市は「1月中旬まで全員がほぼ休めていない。異常な働き方になっている」、能登町は「100時間超えはかなりいる」と説明した。七尾市は100時間超えの職員が471人中128人(約27%)、平均が約84時間だった。

 珠洲市などは時間外勤務が増えた理由の一つに「支援物資の受け入れ」を挙げた。道路事情が悪く、物資の到着が深夜や未明にずれ込むことが頻発。避難所へ運ぶための仕分けのほか、安否確認の電話への応答、避難所運営と、24時間対応が迫られる業務も多かった。

 各市町とも避難者が当初より減少し、自治体ごとにパートナーを決める「対口支援」の応援職員らも入っているため、2月の時間外勤務は1月より減っているという。

故郷のために働く職員、1カ月ぶりの風呂

 自治体職員は、どう支援を続けてきたのか。

 「母が無事か確認してくれ」

 「親族と連絡が取れない」

 発災後、珠洲市職員の鳥毛祥瑛(しょうえい)さん(25)は市議会事務局から総務課へ応援に入った。安否確認の電話が鳴りやまない。「なんで分からんのや!」と電話口では怒鳴られた。安否確認は市民の命にかかわる。緊急時に休みはとれず、12連勤となったこともある。

 市役所には小学校の避難所から通った。両親、祖父母と暮らす家は倒壊を免れたが、家の中はぐちゃぐちゃに。市役所まで車で15分ほどの通勤路は亀裂だらけで危険な状態だった。生まれ育った珠洲の復興に力を尽くしたいと、市役所に近い避難所に自ら移った。「家のことはいいから」と両親も背中を押してくれた。

 仕事が終われば、避難者と配…

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