重い負担か、縁を切るか…家族関係は「リスク」 身寄り問題の背景は
身寄りがない高齢者の入退院時や死後の対応を、誰が担えばいいのか。立命館大の筒井淳也教授(家族社会学)は、こうした「身寄り問題」の背景には、家族関係を「リスク」と感じるようになっていることがあると指摘します。
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「身寄り問題」というと、結婚していなかったり、子どもがいなかったりすることが原因だと思われがちです。しかし、「身寄りがない」という人のなかには、きょうだいや親戚はいて、頼れない、縁が切れている、という人も多いです。
なぜ縁が切れるのか。
原因の一つは、社会保障制度という「公助」が不十分だからです。
「家族関係」をリスクだと感じる時代になっています。公助が不十分なために、過酷なケアや経済的な負担が自分にかかってしまうかもしれません。だから、「関わったら最後」と思ってしまう。
誰もが自分の生活を守りたいから、リスクは徹底的に遠ざけます。
いま、「重い負担を引き受ける覚悟があるかどうか」が家族の定義になっています。周りからも「家族ならば」と期待される。家族に重いケアが必要になった場合には、その負担を引き受けるか、縁を切って何もしないかの二択しかありません。
特に、介護は先が見えません。介護離職の問題もありますが、自分の人生を大きく変えてまで相手の面倒をみる覚悟はなかなか持てません。きょうだいでも他人だと言いたくなる。そうならないくらいの「公助」が、最低限、必要なのです。
もともと孤立的に暮らしている人が、「家族や親族に迷惑をかけたくない」というのは、薄くつながっている縁が切れてしまうのを恐れるから。諦めに近いものがあります。
社会保障制度が十分で、必要なときには公的な助けを得られるのであれば、「迷惑をかける」ことにはなりません。遠い親戚でも、自分の人生に影響しない程度の負担なのであれば、見守りや身元保証、葬式の対応をしてもいい、という人も多いのではないでしょうか。
公助の基盤がしっかりしていれば、家族と知人、友人の区別すらあいまいになります。
たとえば、シェアハウスで暮…