ソニーに「白羽の矢が立った」 TSMC進出を推した二人三脚の関係

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編集委員・大鹿靖明

TSMC誘致の真相②

24日に開所式を迎えた熊本のTSMC。なぜ日本に進出し、巨額補助金が投じられたのか、真相を探る。(全3回)

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 経済産業省に意外な知らせが届いたのは2021年1月のことだった。伝令を務めたのはソニー会長の吉田憲一郎である。訪台した際、TSMC(台湾積体電路製造)のCEO(最高経営責任者)魏哲家(シーシー・ウェイ)から「あなた方がパートナーになってくれれば、日本に進出しても良い」という打診を受けた、というのだ。

 この当時、西山圭太に代わって商務情報政策局長だったのは平井裕秀だった。前年に経産省との極秘交渉は中断していたが、そこからわずか半年での心変わり。平井は「コロナ禍の半導体供給不足の問題があったからでしょう」と振り返る。平井は日米半導体摩擦の末期に課長補佐として担当。日本の半導体産業の凋落(ちょうらく)にじくじたる思いがある。

 コロナ禍によって世界の生産活動は麻痺(まひ)した。それに加えて、宮崎県旭化成マイクロシステムの、次いで茨城県ルネサスエレクトロニクスの、二つの半導体工場が火災に見舞われ、自動車向け半導体の供給が止まった。日本で作れなくなったものを代替してもらおうとTSMCに注文が殺到。すると「日本が欲しいモノを日本で作りましょうか」と、ソニーを介して経産省に伝えてきたのだ。

 これまでの経産省との極秘交…

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    佐橋亮
    (東京大学東洋文化研究所准教授)
    2024年2月26日9時19分 投稿
    【視点】

    タイミングの良い3回の特集記事の2回目です。ぜひ1回目から読んでみてください。 台湾TSMC社の日本への工場誘致に関しては、日本企業にこだわらず、補助金を使ったこと、それが日本の産業、科学技術力の全体を見回した決断だったことが特徴的で

    …続きを読む