切符も切手も一緒にどうぞ しな鉄の無人駅に郵便局を併設

遠藤和希
[PR]

 駅員が一日中いない「無人駅」に郵便局を開き、駅の業務と一体運営する取り組みが各地に広がり始めている。駅の一部業務を郵便局の職員が担うことで乗降客へのサービスを向上し、郵便業務の利便性も高めるねらいがある。

 26日には長野県上田市のしなの鉄道大屋駅の駅舎に大屋駅郵便局が開局。駅舎に開局する郵便局としては全国3例目となる。

 大屋駅の一体運営は、日本郵便信越支社(長野市)としなの鉄道が昨年3月に結んだ包括連携協定に基づくもの。駅舎から180メートルほど離れた国道沿いにある大屋郵便局を移転、改称。郵便局の職員が、高齢者向け回数券や通学定期券など自動券売機で扱っていない乗車券の販売、窓口案内、清掃などの業務を担う。

 日本郵便によると、無人駅と駅舎内の郵便局の一体運営は、千葉県のJR江見駅で2020年8月に開局した江見駅郵便局が最初。24年1月には宮城県のJR作並駅でも作並簡易局が業務を始めた。

 日本郵便がこれらの先行例に続き、一体運営の候補となる局舎を探していたところ、1896(明治29)年に開局した大屋郵便局に白羽の矢が立った。

 しなの鉄道によると、大屋駅は大屋郵便局と同じ年に開業した。地域住民などの要望で開業した国内初の「請願駅」で、郵便局と同様に長い歴史を地域とともに歩んできたが、経営効率化のため、2022年度から休日は無人、駅舎の建て替えが始まった23年度から完全無人駅となっていた。

 1967年に建てられた大屋郵便局の現局舎も老朽化が進み、駅舎の建て替えを機に、駅舎内を日本郵便が借り受けることにした。JR以外の駅舎内に開局する郵便局としては初めてになる。しなの鉄道の広報担当者は「駅利用者の利便性と安全性も向上する。人がいる駅として末永く便利に使える駅にしたい」と話す。

 大屋駅郵便局では開局に合わせて、大屋駅舎と浅間山麓(さんろく)を走るしなの鉄道の観光列車「ろくもん」が描かれた日付印を希望者の郵便物などに押印するサービスを始める。郵便局の窓口で押印してもらえるほか、郵送での依頼も可能で、こちらは15日時点ですでに1千件を超える事前申し込みがあるという。

 また、26日には大屋駅郵便局などで、しなの鉄道の列車がデザインされた記念フレーム切手(1シート税込み1480円)の販売を開始する。

 開局とともに大屋駅郵便局長に就く、大屋郵便局の前橋正二局長(60)は、郵便物の輸送など明治期に始まった両者のつながりをふまえ、「郵便と鉄道はこれまでともに地域のお客様に支えられてきた。明治期の原点に返って地域に寄り添い、サービス向上に努めたい」と意気込みを語った。今後も利便性やサービスの向上につながる鉄道と郵便の協業を模索する考えだ。(遠藤和希)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【本日23:59まで!】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら