どうするアッバス議長 超難問の「2国家解決」 語った希望の道筋

有料記事イスラエル・パレスチナ問題

聞き手・其山史晃 高久潤=ラマラ 構成・今泉奏=エルサレム
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 パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長が20日、朝日新聞との単独会見に応じ、戦闘終結後のパレスチナ自治区ガザの統治について、自治政府が「実務型政府」をつくり、再建に取り組む考えを示しました。日本に対しては、パレスチナ国家の樹立を前提とする「2国家解決」に向けた「国際和平会議」実現への協力を呼びかけました。一問一答は以下の通り。

 ――イスラエル軍の攻撃に、自治政府はどのような対応をするのでしょうか。

 イスラエル軍がガザで行っていることは、現在進行形のジェノサイド(集団殺害)の罪にあたります。10万人以上が殺傷され、70%の住宅や学校、病院、モスク、教会など重要施設が破壊されました。(自治政府が統治する)ヨルダン川西岸、そしてエルサレムでも、犯罪行為が行われています。

 これらの罪について、イスラエルは国際司法の場で裁かれています。我々は、国連の安全保障理事会人権理事会を訪れています。こうした努力に加え、国際的な会合などを通じて、戦争を止め、イスラエル軍をガザ全体から撤退させ、その領土の一部も奪われないように活動しています。さらに、人道的援助を加速させ、避難民をガザ北部に帰還させようとしています。

 しかし、米国の(バイデン)政権は、自衛を口実としたイスラエルのパレスチナに対する侵攻を止める責任を果たしませんでした。世界各地で、これは自衛のケースではないと公言されています。

 ――今回はイスラム組織ハマスによる攻撃をきっかけに、戦闘が始まりました。非政治、非外交の手段をとるハマスの存在について、どう考えますか。

 政治的、外交的な働きかけや交渉こそが、パレスチナ国家の独立を実現する道だと信じている、と明言してきました。暴力と過激化は選択肢ではありません。

 残念ながら、現在のイスラエル右翼政権は、平和の実現を信じず、2国家解決も信じていない。それどころか、パレスチナ人とイスラエル人の平和と共存を台無しにしています。

 我々は、すべての人々にこう伝えます。パレスチナ人の土地へのイスラエルによる攻撃によって、いくつもの災難が降り注いでいます。(パレスチナ人が1948年のイスラエル建国に伴って故郷を追われた)ナクバ(大破局)が再び起きています。それでも、この悲劇を終わらせ、2国家解決を実現する真の機会が目前にあります。

「自治政府はガザから離れたわけではない」

 ――具体的には、どのような方法でしょうか。

 まずは国連安保理決議でパレ…

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2024年2月23日11時9分 投稿
    【解説】

    アッバス議長との単独インタビューを取れたのは、時期としてはとても良いと思うのだが、パレスチナ自治政府が抱える問題などへの踏み込みがやや甘いという印象もある。二国家解決が実現しないのは主としてイスラエル(というかネタニヤフ政権)がそれを拒否し

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