高い枕で寝ると脳卒中になりやすい? 国循が「殿様枕症候群」を提唱
高い枕で寝ると脳卒中になりやすい――。脳卒中の原因の一つ、特発性椎骨(ついこつ)動脈解離は、高い枕で寝る人ほど発症率が高いことが、国立循環器病研究センター(国循)の研究チームの分析で明らかになった。
研究チームは「殿様枕(とのさままくら)症候群(英語名=Shogun pillow syndrome)」という新しい病気の概念を提唱、メンバーの江頭柊平(しゅうへい)医師(現・京都大)は「何げない睡眠習慣が脳卒中のリスクになり得ることを認識してもらい、予防につなげてほしい」と話している。
特発性椎骨動脈解離は首の後ろの血管が裂け、脳卒中を起こす。頭痛などをきっかけに発症に気づくことがある。脳卒中全体の2%程度だが、働き盛りの世代を含む15~45歳の脳卒中患者の1割程度を占め、うち2割近くが亡くなったり後遺症が残ったりするが、根本治療がない。
研究チームは、原因がわからない患者の中に高さ17~19センチにもなる極端に高い枕を使っている人がいることに注目。2018~23年に国循で特発性椎骨動脈解離と診断された53人(45~56歳)と、同じ時期に脳梗塞(こうそく)や脳出血で入院し性別や年齢などをそろえた53人を比較対象とし、発症時に使っていた枕の高さを調べた。
枕は寝具メーカーや業界の専門家の意見を参考に、売られている枕の中で12センチ以上を「高い」、15センチ以上を使用がすすめられないほど「極端に高い」と定義した。枕の高さが12センチ以上は計26人いた。
その結果、12センチ以上の枕を使っていたのは特発性椎骨動脈解離の患者で34%(18人)に対し、比較対象の方は15%(8人)。15センチ以上ではそれぞれ17%(9人)と1・9%(1人)だった。枕が高いほど特発性椎骨動脈解離を発症しやすかった。
枕の高さでみると、15センチ以上を使っていた人の9割が特発性椎骨動脈解離の患者だった。
枕が高いと首の屈曲(あごが胸につく方向に曲がっている度合い)が大きくなるほか、寝返りなどで首が回るときに血管が傷つくことが考えられるという。枕の硬さや、特発性椎骨動脈解離のリスク要因である首の屈曲の有無も調べており、枕が硬いと発症との関連が強く、やわらかい枕だと緩和される傾向がみられた。
特発性椎骨動脈解離は過去に…