台湾の「今」 民意の動向、歴史、社会を知る4冊 寄稿・小笠原欣幸

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寄稿・小笠原欣幸(政治学者、東京外国語大学名誉教授)

 選挙イヤーの先陣を切って1月に台湾総統選挙があった。台湾の有権者が、台湾と周辺の離島を選挙区として台湾のトップを選ぶ。完全に民主的な制度だ。選挙戦の期間中も何の混乱もなく、投開票も整然と行われた。これを中国が認めないことから話は複雑になる。

 最近では中国による台湾への軍事侵攻(台湾有事)の可能性に関心が集まっているが、台湾の政治と台湾の民意を知らずして台湾有事を論じるのは危うさがある。米中の思惑は確かに重要であるが、台湾には台湾の内政のロジックがあって、国際政治の視点だけで見ていると台湾情勢を見誤ることになる。

 民進党政権が継続する一方、議会は与党過半数割れとなったのは、一つの政党や政治勢力の強大化を嫌う、台湾の有権者のバランス感覚が働いた結果である。米中対立の視点からは理解しにくいが、台湾の歴史や社会構造を知っていれば「なるほど」と思うだろう。

 台湾の現状を手っ取り早く知りたいという人にお薦めなのが、野嶋剛『台湾の本音』。「台湾を紐解(ひもと)く」と題して、台湾の国家性、歴史、中台関係、アイデンティティ、日台関係、台湾有事について、読者の疑問に答える形で解説している。コンパクトでわかりやすい。

 台湾をもっと知りたいという…

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