中古電車の「楽園」ことでん、新車導入に踏み切る 鉄オタ記者も注目
鉄道ファンから中古電車の「楽園」とも呼ばれる香川県のローカル私鉄、高松琴平電気鉄道(ことでん)が、65年ぶりとなるオリジナルの新型電車の導入に踏み切る。
県が9日発表した新年度当初予算案で、新型車両の設計費の一部として9千万円を盛り込んだ。県によると設計費は2億円で、うち9割が国、沿線市町も含む補助金という。
2025年度以降、古い電車から順次置き換えていくとみられるが、ことでんは車両数や導入時期を明らかにしていない。
ことでんの電車80両(レトロ電車を除く)は、すべて京浜急行、名古屋市交通局、京王電鉄から譲渡された中古電車だ。
記者も、全国各地から集まる中古電車に魅了された一人です。冒頭の写真は記者が中高生のころに撮影しました。新型導入の理由に触れた記事後半で、別の写真も紹介します。
そのうち、9割に当たる72両が製造後50年以上経過している。最も古い電車は、1957年製造でもと京浜急行の1071号、1072号でもうすぐ67歳。車両に起因するとみられる輸送障害(30分以上の遅延)も頻発しており、2023年度までの5年間に15回を数える。
通常なら大手私鉄から中古電車を導入するところだが、大手私鉄もコロナ禍で経営が苦しく、車両の更新を先送りしてきた。
そのため、ことでんに譲渡する中古電車もなかなか捻出できず、ことでんは電車の老朽化が進む中、新造を決めたとみられる。
ことでんが最後に導入した自社オリジナルの電車は1960年の「1010形」(2両)という。
台車やモーターは中古品を流用したものの、当初はセミクロスシートで急行「こんぴら2号」として走った。その後はロングシート化や前面を貫通式にするなどの改造を受け、2003年に廃車になっている。
その前は1952年製造の「10000形」(2両)で、こちらも台車は中古品を使ったが、急行「こんぴら号」に使われた。改造を経て86年に廃車になっている。
完全な新造車両としては、1928年の「5000形」(3両)までさかのぼるとされる。5000形の最後の1両は2020年9月まで「レトロ電車」として走り、高松市の建設会社に譲渡された。
記者(62)は中学、高校時代を高松で過ごし、ことでんで通学したこともある。全国各地から集まった珍しい中古電車に魅せられ、カメラを向けたが、オリジナルの電車もまだ残っていた。
65年ぶりとなる新車は、かつてのように観光にも使える電車になるのだろうか。導入が待ち遠しい…